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犬神家の一物

 犬の死体を見つけてしまった。
 家に帰る途中の、空き地だ。
 今日も今日とて残業で遅れた深夜だった。

 ここには子供の頃から無人のボロい家が建っていたのだが、先週取り壊されたばかりだ。
 そんな生まれたての空き地に、みすぼらしい老犬が死んでいた。

 動物の死体って、ぱっと見てわかるのが不思議だ。
 微動だにしないからか? 冷たくなってしまったからか?

 寝ている動物は、寝てる? 死んでる? って慌てるのにな。
 とにかく、目の前の空き地の真ん中で、犬が死んでいる。
 その事実に変わりはないのだ。

 どうしよう。
 通報したほうがいいのか?

 道路上だったら国交省の緊急ダイヤルだけど……。
 あれは私有地だよな。
 どこに連絡すればいいんだ?
 所有者か?

 ……。
 いや。
 俺には関係ないか……。

 そう、関係ないはずだ。
 こんなことで思い煩うのはやめよう。
 他にやることはたくさんあるのだから。

 そんな顔したってダメだぞ。
 恨めしそうな顔から目をそらす。

「じゃあな」

 何もなかったことにして家路を急ぐ。

 さて、晩飯は何を作ろうかな。
 今日も冷蔵庫と相談だな。
 骨付きカルビがあったはずだ。
 楽しみだワン。

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