「このアマ、調子に乗ってんじゃねぇぞ?」
「足の下には地面しかないのだが……」
駆けつけたスーパーの前。
ナンパ男に絡まれてる真央がいた。
ナンパ男はだいぶイキリ倒していたが、真央はいつもの感じで憮然と言い返している。
そりゃ、ケンカにもなるよね。
まあ、ナンパくらいでよかった。
……と思ったら、真央の手首をつかんで持ち上げた。
「いいから来いよ」
それでも平然と睨み返す真央。
「久しぶりに顔を出して歩いてみたらこれか。とほほだな」
そうは言っても、ほんのちょっぴりだけ震えている真央。
俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
いまの真央に魔王の力はほとんどない。
まったく世話が焼ける幼馴染だ……。
「はいはい、通りますよー」
二人の間を割って歩く。
邪魔だから、ナンパ男の手首はチョップしたけど。
「痛ってぇ! てめぇ! コロされてぇのか!?」
なんで、すぐにコロスとか言っちゃうかなぁ。
アウトロー界隈の挨拶なの?
「遠慮しまーす」
笑顔で応対だ。
対話こそ文明人の証なのだから。
そこに問題発生。
「勇太ぁ」
真央が後ろから抱き着いてきたのだ。
庇護欲を掻き立てられるような声で。
これ、絶対に状況が悪化するよね?
ほらナンパお男がスゲー睨んでるし。
「やっぱコロス」
短気は損気ですよ!
そんなの関係ねぇ、とばかりに殴りかかってくるナンパ男。
あぁ、そんな大振りなパンチじゃ当たるの難しいじゃないか。
あえて、一発殴られて警察を呼んだ方がいいかな?
どうしようか迷っているうちに、かがんで避けちゃった。
そして、みぞおちにパンチ入れちゃった。
お前、隙が多すぎだろ!
「やべ」
でも、大丈夫。
勇者パンチは、常人の目には見えないスピードなのだ。
ナンパ男が勝手に突っ伏したようにしか見えないはず。
「おぉ!」
「彼氏さんカッコいい!」
「死ねナンパ男」
速攻バレでした。
何ということだ……。
「この! この!」
というか、倒れたナンパ男を死体蹴りする女性が何人もいてドン引きだよ。
そんな有名な嫌われ者だったのかコイツは。
「ありがとう彼氏さん!」
まちカド勇者みたいになってしまったぞ……。
騒ぎが大きくなる前に逃げよう。
「それではサラダバー!」
真央の手を引いて走り去っていく俺。
「ありがとう勇太。うち、今日はすき焼きなのだ。1魔王ポイントを進呈しよう」
真央の左手の長いビニール袋からは長ネギが頭を出していた。
「そっか」
すき焼きかぁ……ネギないと困るよね。
納得しちゃった俺もダメだと思いました。