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せみのこと


昨今すっかり涼しくなりましたね。
彼岸花はそろそろ終わり、金木犀がそろそろ出番、そういうご時世。
そうでなくても例年より早く残暑が退いてゆき、今年の冬はさぞ早そうな予感でいっぱいです。
新米まだかなー?

そんな季節感なので陽気な天気であっても風は涼しくて、オフィスの空調はずいぶん昔に切られて窓を開けっ放しにしています。近頃じゃ、それでもやや寒いくらい。

だというのに昼間セミが鳴いてました。

ミーン……ミーン……ミーン……
一瞬耳を疑いました。ひと月ほど前まで散々聞いた音でしたが季節を過ぎればこんなに目立たなくなるものなのですね。音は大きくありません。おそらく一匹だけでしょう。

お昼休み中、窓から聞こえる蝉の声を聴きながらお弁当を食べていました。
お行儀悪く、片手にはスマホ。カクヨムを読んでいました。金木犀が話題に上がっています。

けれど今私が聴いてるのは蝉の声。

ご飯を食べながら、鳴いてる蝉の事を考えます。そしたら胸がキュっと締めつけられます。
もっと早く土から出てきたらたくさんいたでしょうに。
来年まで待てたなら、もっとたくさんいたでしょうに。
殻を破って出てみれば、思ったよりも涼しくて。静かで。きっと他に仲間はいなくって。それでも幼虫に戻って土に帰る訳にもいかなくて。

そんな中、鳴くのってどんな心持ちでしょう。私、ここだよって。

こんな心境になった作品って何かなかったかなと色々記憶を引っ張り出しながらお昼ご飯を食べてました。でもニアミスはあってもピッタリな作品って思い浮かばなかったんだよな。

例えば夏真っ盛りでもパートナーが見つからず、子孫を残せず死んでいく蝉もたくさんいた事でしょう。そんな蝉たちとこの蝉とではどちらが幸せなんでしょう?

15分ぐらいしたら、聞こえなくなりました。きっとどこかへ飛んで行ったのでしょう。きっとそうでしょう。せめて天寿を全う出来ますようにと、祈ろうと思いましたが何が幸せか分からなくなって祈るのを止めました。

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