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🎀新編 長安変奏曲、第2話 古代の女の船旅

🔴🎀新編 長安変奏曲(古代~近世官能シリーズ⑦)、https://bit.ly/410wYps
 第4章 帰国
 第1話 空海と逸勢の帰国
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 第2話 古代の女の船旅
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  空海は目を丸くし、「おいおい、迷信深い水主たちが納得しないよ。古代日本の船旅では、女性の乗船を忌避する風習が強かったんだ。神道の穢れ信仰から、生理や出産を血の穢れとみなし、海神の怒りを買うと嵐や沈没を招くと信じられていた。遣唐使の船でも、女性の搭乗は極めて稀で、船員たちは女性を乗せると船魂が怒るとして抵抗した記録がある。実際、第8次遣唐使で蝦夷の女性を乗せたケースはあったが、それは外交的な贈り物としてで、水主たちの忌避感は強く、船の安全を脅かすと恐れられた。君の女性たちを乗せるのは、手強いぞ」と説明する。

 逸勢は頭を掻き、「|葵《あおい》は僕の正夫人なんだ。小蘭と小梅は愛人なんだよ。良い知恵はないかな?」と気弱げに言う。空海は考え込み、「まあ、まだ、水主たちを誤魔化す手はある。私の法力でダメなら、私の飼っている物の怪に手伝わせよう」と提案した。逸勢が「物の怪?」と不審がる前で、空海は「夢魔共よ、出でよ」と九字を切り、指を組む。

 部屋の空気が揺らぎ、半透明の幻影が現れる。逸勢は驚いて腰を抜かし、「く、空海!、彼女らは博多津から長安まで我々一行をたぶらかして、殺そうとした魔物ではないか!」と叫ぶ。

 スナーヤミラーは絶世の美女の姿で、薄絹のサリーをまとい、金鈴をカランと鳴らし、「あら、橘様、わしらを覚えとったっちゃ?」と妖艶に微笑む。マイトリーイは稚児の姿で、蓮華模様の衣を翻し、「長安でも橘様を見かけたばい。女どもをはべらして、楽しそうやったっちゃね」と囁く。

 空海は笑い、「逸勢、落ち着け。彼らは私の力で味方だ。スナーヤミラー、マイトリーイ、君たちに頼む。逸勢の|葵《あおい》、小蘭、小梅を遣唐使船に乗せるよう、水主たちを誤魔化す算段をしてくれ」

 スナーヤミラーは腰をくねらせ、「ほお、空海様が頼むなら、橘様の女どもを船に乗せるくらい、簡単っちゃね。ほいじゃが、わしらも日本に連れてってくれんね。長安も飽きたっちゃ。日本の朝廷をたぶらかすのも、暇つぶしにええっちゃね」と妖しく笑う。マイトリーイは稚児の清らかな微笑みで、「わしの歌で水主たちを惑わすばい。空海様、日本で仏の教えを広めるつもりやろ? そりゃ面白そうっちゃね」と続ける。

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