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💯雪の残る湯宿、第6話 省吾の告白

💯雪の残る湯宿、https://x.gd/Gacci
 山奥の小さな宿で中年男と壊れたゴスロリ少女の凍てついた夜が始まろうとしていた。
 東京大学編
 第5話 狐の憑婚
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 第6話 省吾の告白
 https://x.gd/aNdSC
 第7話 狐落とし

 私の故郷、岩手県の小野能勢村では、秋の収穫祭に「狐の憑婚」という儀式が行われます。八年に一度、村の処女の中から一人が選ばれ、狐神の依り代となります。

 狐神は古くから村を守る守護霊とされていますが、村の処女に憑依すると人格を乗っ取り、淫らな欲求を露わにし、贄の魂をゆっくりと啖うようです。村人たちはそれを豊穣の代償と信じ、霧の夜に怯えながら儀式を繰り返しています。

 私の両親は、26年前に小野能勢村を出て、盛岡市に住まいを移しておりますが、親族も多数小野能勢村におりますので、村には私を連れてたびたび帰郷していました。

 盛岡市の岩手大学二年時の秋、私はその儀式の贄に選ばれました。体が弱く、女のような細い体躯が、狐の好む「柔らかな器」として適していたからです。報酬は村の基金から二十万円出ました。

 奨学金で大学の費用を充当していますが、二十万円はありがたかったのです。私は喜んで贄となることを承諾しました。私は当時、村の風習を軽く見ており、奇祭程度に思っていましたが、選ばれた瞬間から胸に不安が広がりました。あの村の空気が、重くのしかかるような予感がしました。

 数日間の山籠もりとなります。真の目的は、狐神の憑依を通じて村の豊穣を祈るものでした。しかし、村に住んでいない私は、山村の単なる奇祭だろうと高を括っておりました。私は山籠もりの間、森の木々が囁き、狐の金色の目が闇から覗いているような気配が、常に私を包んでいました。孤独と不安が私の心を蝕み、夜になると狐の啼き声が耳に残り、眠れなくなりました。

 神社には、神主の娘、杵崎恭子がいました。高校三年生の彼女は、華道部の部長で、村のアイドルです。黒髪を優雅に結い、穏やかな微笑が、まるで古い人形のように儚いです。

 ですが、その瞳の奥に、時折、獣の輝きが閃きます。彼女が儀式の導き手です。私は、心臓を高鳴らせて神社に足を踏み入れました。玄関で迎えてくれた恭子の手は冷たく、狐の息吹のような腐敗した甘い匂いがしました。

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