「……傘、一本足りないな」
昇降口の外は土砂降りだった。
俺、三姉妹、そして篠崎。
五人いるのに、手持ちの傘は四本しかない。
「じゃあ私、センパイと一緒に入りますっ!」
篠崎が満面の笑みで、俺の右腕にすかさず抱きついてくる。
「ちょっと篠崎さん、抜け駆けはずるいよ。誠はあたしと入るの」
一花さんが即座に反対側へ回り込み、俺の左腕を確保した。
「合理的に考えて、雨に濡れると体調を崩しやすい私がマコトと入るのが最適よ」
「ふ、二葉ちゃん! それなら私だって、誠くんと……!」
二葉さんと三桜さんまで、じりじりと包囲を狭めてくる。
四人ぶんの体温と、それぞれ違う匂いが一度に押し寄せて、頭がくらくらしてきた。
「お前らな、女子同士で入るって発想はないのか。なんで俺が基準なんだ」
「だってセンパイの傘、一番大きいですからねっ!」
なるほど。
人気があるのは俺ではなく、俺の傘のほうだったらしい。
「……分かった。俺の傘は貸す」
自分の傘を篠崎に押しつけると、四人が一斉にきょとんとした顔をした。
「えっ、誠くんはどうするの?」
「走る」
鞄を抱え直して、昇降口を飛び出す。
背後で、四つの足音がついてきた。
振り返ると、傘を差したまま全員が走っている。
「なんで追いかけてくるんだ!」
「だって、置いてかれるほうが嫌だし」
一花さんが、雨音に負けない声で笑った。
結局、五人ともびしょ濡れになって帰った。
傘は四本、ちゃんとあったのに。
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