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第09話「穴を埋める」を公開しました

第09話「穴を埋める」を公開しました。

最悪の事態は回避されました。

悠真は保護され、病院で休んでいます。クラストロンも直ちに傾く状態ではなく、既存受注、現場、資金繰りに差し迫った問題はありません。

しかし、助かった命と、傷付いた会社が直ぐ元通りになる訳ではありません。

美佐子の失言、復縁要請動画、匿名掲示板への相談。

それらが結び付いた結果、クラストロンが進めていた新規顧客案件の一部が、保留や撤退へ傾きました。

会社の命取りではありません。

それでも、統合白紙化後のクラストロンが「自分達だけでも前へ進める」と示す為に必要だった、新しい成長の芽です。

積み上げかけた信用が剥がれ、営業計画と現場の稼働に、小さく現実的な穴が開きました。

そこで鷹野照臣は、以前から検証していた案件を提案します。

但し、照臣は自分を救世主として売り込みません。

失われた事業統合の代わりにはならない。

十年先の競争力も、一つの案件では作れない。

それでも、今できる現実的な穴埋めはある。

準備していたからこそ、偶然空いた場所へ次の一手を差し込めるのです。

悠真にも、今やるべき仕事がある

病院で目を覚ました悠真は、直ぐに会社の状況を尋ねます。

しかし、照臣は答えを急がせません。

今の悠真の仕事は、会社を背負う事ではありません。

眠り、身体を戻し、再び立てる状態を作る事です。

完全に元と同じ場所へは戻れなくても、新しく立てる場所は作れる。

その為の最初の一歩が、今は休むことでした。

動画の拡散は抑えられつつある。
悠真は眠っている。
美佐子の投稿は削除され、顧問業務も停止された。
流れた案件の穴にも、当面の添え木を入れられそうです。

一見すると、火は消えたように見えます。

しかし、照臣は別の危険を感じ取ります。

孤立した美佐子が、自分の言葉を肯定してくれる相手を求めた時、次に誰へ何を話してしまうのか。

善意を装って近づき、彼女が望むような言葉で語りかける者が現れたら、美佐子は何を渡してしまうのか。

会社の問題にも、人間の孤立にも、応急処置は入りました。

けれど、根本の穴はまだ残っています。

火は消えましたた。
少なくとも、今夜燃えていた火だけは……。
でも、それは次に燃える場所が、まだ見えていないだけかも知れません。

第09話は、目の前の穴を現実的な手段で塞ぎながら、その先に潜む新たな火種が、静かに輪郭を持ち始める一話です。

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