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トレモロ 2巻 3章 6話

先住民のロングハウスに到着した。
キングは族長の元に報告に行った。
族長の椅子の前に捕らえた違法業者10人を並ばせた。族長とキングが奥の部屋から現れた。

族長は椅子に座り肘をつき、寝ているカルバンを見た。「なぜ、みな寝ている。カルバンはやられたのか?」

「帰りにスノーにスリープスタンプを押してくれとねだって、このザマだ。こいつはこのままほっといていい。他の奴ら起こしていいか?」キングは寝ている10人に歩み寄った。

「うむ。頼む。」族長の合図でキング、キャメロン、村人達で桶の水を叩きつけた。寝ていた10人は2、3杯かけられると次第に目を覚ました。

族長が語りかけた。
「村人、狩人、戦士達を殺したのはお前達だな。木も畑も奪い、川を血で汚したな。」

「ゲホッ、ゲホッ。仕事でやっただけだ。」

「木を盗み、キングの村に自然災害を招いたな。」

「はあ?知らねーよ。証拠は?」

「何千年もかけてできた自然の力を数日で食い潰したな。」

「だったらなんだよ。取ったもん勝ちだろ。早く、警察ロボ呼べ!」

「ここが自治領だとわかっておらんな。ふんっ。ギルドの皆様、退室下され。」

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ギイイィ、バタン。ロングハウスの扉が閉まった。キャメロンはカルバンを背負って、クラウン達と表に出た。

「ねえ、中で何するの?」クラウンは歩きながらキャメロンに聞いた。

「明日、キングに聞いてみろ。スゲーパワーだったな。バン、バン!次も一緒に行こうぜ!」キャメロンはクラウンのロージーのジェスチャーを真似して喜んだ。

「キャメロンもすごいコンビネーションだった!」

キャメロンは鼻をツンと上向きに得意気だ。広場の円台にカルバンを寝かせた。
みなもいくつかある円台に適当に座った。

「その手榴弾みたいなの、どーなってるの?」スノーはキャメロンに聞いた。

「あ、これ?カミハタの実。上のT字のヘタを引き抜いて投げつけると弾けて固まる。山の上の方に実ってる。イタズラダメだぞ。」キャメロンはイタズラっぽく笑った。

車のライトが向かって来るのが見えた。
ミゲル達が到着した。
「おい!また撃破したって?大したもんだ。明日は休養取ってくれ。」

「うん。僕たちまた一緒に行ってもいい?」クラウンはミゲルにたずねた。

「わかった。だが、明日は休んでくれよ。こっちが追いつかねー。」ミゲルは少し嬉しそうな困り顔でスノーの横に座った。

「スノーちょっといいか?ログ見せてくれ。」

スノーはログを見せ、ロングハウス周辺の斥候のクエストにサインを貰った。

「警察や環境省が来たり、現場の安全対策に時間がかかるから、キングがでて来たら、先に帰って休んでくれ。」ミゲルは立ち上がって、みなに向かって話した。

「ん?ミゲル?」カルバンが目覚めた。ミゲルは寝ていた理由を聞いて笑った。

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しばらくして警察ロボや輸送車が到着し、ロングハウスに入って行き、違法業者10人は連行された。

キングは疲れた顔で出て来た。
キャメロンとカルバンが駆け寄りハグした。

クラウン達とキング達はそれぞれの車で自警団のログハウスに帰った。

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翌朝、クラウン達のログハウスにノックが聞こえた。

扉を開けるとキング達だった。「今日、休みだから遊びに行こうぜ。」

みな支度して街に繰り出した。

「普段はそういう格好なんだな。イケてるな。ベジタリアンのモーニングを食べに行こう。」キャメロンのお気に入りのカフェに向かった。

オシャレなカフェについた。
色とりどりの野菜やフルーツ、ソース、スープが並んだビュッフェスタイルだ。
カットトマトや辛いソース、色んな具材を薄いパンで巻いたり、大きなサラダボールで混ぜて食べたりと、満足できるメニューだった。特にハニは喜んだ。

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「ギルドに行ってみたい。」と、食後にカルバンが言い始め、クエストの報告がてら向かった。

カウンターにギルドスーツを直してくれた美女がいて、キャメロンとカルバンはアピールした。報酬確認すると、55クレジット、レベルアップはなしだった為、カウンター横のモニターで報酬を受け取る事にした。待っている間、キャメロンとカルバンは美女を口説いていた。

クラウン達は釣り人に釣り禁止の呼びかけと、釣り禁止の看板の設置、ロングハウス周辺の斥候のクエストの報酬を受け取り、ギルドを出た。

「あんな可愛い子が働いてたのか。いつも世話してくれるのか?いいなー。」

「破れた服縫ってあげるわ。脱いで〜。はーはっ!」

キャメロンとカルバンはふざけあっている。
キングが「ブラザー、行きたい所はあるか?」と、クラウンにたずねた。

「僕、動物いっぱい見たい。」クラウンは即答した。

「絶景ポイントもある?」ハニも話に加わった。

「あるけど、そんなんでいいのか?もっと派手なクラブとかデカいショッピングモールもあるぞ。」キングは目を開いて言った。

クラウンとハニはうなずいた。

「じゃーサップに行くか?マップ出せ。」

クラウンがマップを出すと、キングは目的地の山小屋をタップした。「ついて来い!」

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車で1時間半くらいで目的地の山小屋についた。
開けた山の上には、30mはある大きな白い像が立っている。「大地の父」と言い、ランドマークになっている。山々の間に森や街が一望できた。運河に沿ってジャングルも広大に広がっている。

山の上は草原が広がり、山の下には大きな湖も見えた。
カルバンがすぐ近くの滝に案内してくれた。
「アクアドラゴンの滝」で、ハニは記念にみなでログを撮った。

「滝を上から眺めるの初めてだ!スゲー。」
ブラストは感動した。

車で滝の下に広がる湖に向かい、水着とサップボードとパドルを借りて、みな自由に過ごす事にした。

「サップヨガしたいから兼定さんに連絡しよう〜。」ハニはコールした。

ディスプレイが立ち上がり、画面には赤い顔をした兼定とまごろくが映った。

「ハイ!兼定さん、まごろくさん元気ー?」ハニは明るく手を振った。

「おー!ハニちゃん、なんやこんな時間に。」嬉しそうに、まごろくが答えた。

「サップヨガしたいから、兼定さんに教えて貰おうと思って。」

「元気にやっているか?こちらは夜中で、今まごろくと飲んでた所だ。ヨガはご勘弁を。」兼定は酒をぐいと飲み干した。

「虎徹〜おらんのか?」まごろくが画面に近づいた。

「あ!兄さん!まごろく!」虎徹も嬉しそうに画面に近づいた。

「虎徹も真面目にがんばっておるか?」兼定が優しく声をかけた。

「はい!今は運河の安全対策に励んでおります。」

「うん。時々、報告読ませてもらっている。みなと仲良くがんばりなさい。アースからも応援を送れる事を師匠も喜んでおられたぞ。協力が必要な時は遠慮なく言いなさい。」兼定はぐいぐい迫るまごろくを押し除けた。

クラウン、ブラスト、スノーもディスプレイに集まり、酔っ払った侍2人と久しぶりに談笑した。

「ハニ殿、虎徹がヨガできるから聞いてみなさい。虎徹はシャイ故に、自分から教えたがらないだけだから。」兼定が最後に教えてくれた。

「わかった!ありがとう!じゃまたね。みんなによろしくね。」ハニはディスプレイを閉じた。

「とゆー事で虎徹さん、ヨガ教えて。お願い。」ハニは合掌した。

犬達も一緒にサップボードに乗り、湖に漕ぎ出した。

虎徹は初めは照れたが、ゆっくり教えてくれた。キング達も寄って来た。

「足を大きく開いて片膝を曲げる。吸って両手を上げ、吐いて肩まで下げる。深呼吸。」虎徹は戦士のポーズをやって見せた。

バシャーン!!
クラウンとチョコが湖に落ちた。

ブラストが笑った瞬間、バシャーン!水飛沫をあげて落ちた。

キング達はさすがにどのポーズも美しく、サップヨガを気に入った様だった。

スノーとゴーストもボードから落ち、サップヨガは盛り上がった。

サップヨガの後は湖に自由に繰り出し、みなリフレッシュした。

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キングからメッセージが届いた。
「そろそろ昼飯にしよう。ここのレストランは安全なシーフードが食えるぞ!」

セビーチェがテーブルに運ばれた。レモンがさっぱりと美味しく、みなばくばく食べた。海鮮スープ、エリッソ(ウニ)とバゲットも絶品だった。

午後はみなクラウンに付き合って、湖の奥地にある、自然動物公園に向かった。
「動物に餌をあげないで下さい。」看板の先は崖や湖、滝を巡り、絶景が続く。
森の中を歩いて、ウッドデッキのトレイルコースを進んだ。遠く下の方に湖が見え、クラウンは足がすくみそうになった。

森の中、キング達は動物を見つけるのが早く、クラウンはログを撮るのに大忙し。大収穫に興奮した。
ハナグマ、グアナコ、コモンマーモセット、マーモセットだけでも数種類いた。動物達と癒しの時間を過ごし、充実した1日となった。

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夕方、ミゲルから「すまんが、立て込んでいて、明日も休んでくれ。自警団は稽古日だ。」と、メールが来た。

ミゲルがブラジリアン柔術の師範をしていると知り、スノーと虎徹は稽古の参加を申し出た。

その間、クラウン、ブラスト、ハニはラファエルに会いに行く事にした。

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翌日、ラファエルの家。
ラファエルの部屋は取材した資料が散乱していた。ラファエルの母親は手料理でもてなしてくれた。

「ポンデケージョの宣伝してくれた?ここ数日、買いに来てくれる人が増えたのよ。」

クラウン達は笑った。釣り人に声かけする時に配ったのが良い宣伝になった様だ。

ラファエルの母親はランチの後、忙しく店で働いた。

ラファエルは取材の成果を色々見せてくれた。「君達にも取材いいかい?」

クラウンはラファエルの取材ログを読んだ。「なんか、前と文章の雰囲気違っていいね。」

「わかるか?雑誌社辞めて、フリーになったんだ。」

「え?そうなの?私達のせい?」ハニはうろたえてラファエルを見た。

「違う、違う。自分で決めた事だよ。」ラファエルは一息ついて話してくれた。

「いいかい?君達はまだ若い。全ての情報を文字通りに信じるなよ。レッドフィルターとかイエローフィルターって言葉聞いた事ないか?」

「レッドフィルターって惑星や国単位で情報が遮断されてるってやつ?」ブラストがたずねた。

「そう。レッドフィルターがないからと言って、安心しちゃいけない。イエローフィルターは嘘では無いけれど情報が一部切り取られ、事実とは違った印象を与える事を言うんだ。」

「へー、気をつけよ。見れない情報、曲がって伝わる情報か。自分達で調べたり、考えないといけないね。」クラウンは初めて知った。

「そう。名前は伏せるが君達の置き手紙や、今回見た事、アルトゥールの話なんかは全て本当の事を書かせて欲しい。許可をもらえるかい?」

「うん。いいよ。僕もそっちの方が読みたい。」

ラファエルは取材内容を読ませてくれた。

ーラファエルの取材ログー

◆元首長
自ら違法採掘で汚した運河の魚を食べて、手足の痺れや痛みを患っていた。癒すため、毎日エステティシャンを呼び寄せていた。元住居で表向きにエステ店を経営し、地下で違法遺伝子培養、拉致監禁を行っていた。


◆大男
元首長に雇われていた、クレーン操縦士。
過去は公開処刑人だった為、個人情報が削除されている。
元首長が失脚してから、身元が割れない為、手足となって違法行為を繰り返していた。


◆ギルドS
エステ店で張り込んでるいる時、動かないマーキングポイントをみて捕らわれた人がいるのではと判断。踏み込むきっかけを掴む。


◆アルトゥール
サッカー選手のアルトゥールはエステ店に客として行った際に、トップアスリートの代謝機能に目をつけられ、そのまま眠らされ監禁。2年近くゴールデンベビー培養の為に細胞や脂肪など取られ続けた。現在、療養中、回復に向かっている。


◆ギルドC
幸運の置き手紙。

ラファエルさんへ

ラファエルさん、ママ、お世話になりました。
午後2時、カメラを持ってエステ店の前で張り込んでて。
火事になったら消防に連絡してね。
もし、ジャングル自警団が協力してくれるなら、運河の下流ポイントで待機してて。
冊子の真相を最前列で見て、みんなに知らせて。

ギルドC

※なお、エステ店で起きた火災でのケガ人はいない。


◆ゴールデンベビー参考

かつて、なんらかの病気を持った夫婦が子供を諦めていた時代から、スターベビーが開発され病気を遺伝させない様になった。しかも、次の世代のゴールデンベビーはその病気にかからないなどの特性を持っていたため、安全性、有用性も認められ、爆発的に広まった。生まれてくる命を守り、危険な病の遺伝子の抑制に繋がった

倫理の問題、遺伝子の技術を認めていない星もまだたくさんある。
この星も数十年前に規制が撤廃され、スターベビーや他の星の娯楽も少しずつ解禁されて、星がエネルギッシュに変わっている。
近親交配ばかりでは種は絶滅してしまうと、呼びかけた研究者も多くいた。今ではこの星の混血もかなり増えている。

現在でも違法培養でゴールデンベビーを作る事は、どの星でも禁止されている。
ゴールデンベビーは愛の庇護のもとに、スターベビーの様々なタイプの両親から受け継いでいくものだ。

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続く。

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