「ただ語りましょ～」を含む小説

　ある日、しがない大学生の町谷は校外にひっそりと構えられた喫煙所の一角で、あまり付き合いのない先輩に呼び止められた。 「──町谷はさ、雛人形って家にあった？」 　唐突な質問。…

被害者、加害者、傍観者――。 様々な視点が交差するいじめの物語。 誰もが語り、沈黙し、考える。 正しさも救いもここにはない。 一つだけ残るのは、誰も何者でもないという痛みの静けさ。

「キレイな爪が欲しかっただけ」――その常軌を逸した動機で、若い女性の爪をすべて剥がし殺害する連続猟奇殺人事件が発生した。ベテラン刑事の田所、若手刑事の若林、そして女性警察官の宇内…

男性の体の一部がある日突然吹き飛ぶ、メンズクライシスという現象が起きる。そんな世界線の現代日本で、家出少女のココはSNSで知り合った男の元に身を寄せていた。男の暴力に耐えながら、…

この街のどこか、あるいは誰かの心の片隅に、そのバーはひっそりと存在している。 名前も地図もないその店は、決まって人生のどこかで足を止めた人の前に現れる。 語り部は毎回違う。 背…

キメキメのやい！BBAが語る、あの壺。 前作の歪みと気持ち悪さから、三重構造の無限美へ。 陶芸家・鰐先生が作った“兄と弟と霧”の壺に泣き笑い。 オマージュと考察が混じった、壺への…

壁は深い藍色。扉は古びた黒い木製で、 その取っ手には真鍮の鈍い光が宿っている。 小さな灯りが、まるで心の中だけを照らすように、静かに揺れている。 扉を開けると、そこは別の時間が…

西暦894年。帝に仕える百戦錬磨の武士、橘嵐（たちばなのらん）は、物の怪討伐の任の最中、千年の時を生きる人魚・エリーと出会い、禁断の恋に落ちる。家も、地位も、家族も、全てを捨てて…

彼女は、あの夜に誰かと出会うなんて思っていなかった。 ただ、バスの静けさと、冷たい窓ガラスと、少しの安らぎが欲しかっただけ。 でも、ふとした思い出がよみがえった瞬間—— 彼が戻…

ねぇ、神様、僕が生きる意味を教えてください。 ねぇ、神様、どうして彼はいなくなったのですか。 ねぇ、神様、生かした理由を教えてください。 学生時代に綴った詩を表に出します。…

　星ノ宮学園に転入してきた碧は、実用主義の幼なじみ早紀とともに、閉鎖中の分校旧図書館で錆びた鍵と羅針盤を拾う。地下に眠る「時の図書館」の扉を開くと、羅針盤の針は本棚ではなく失われ…

四都の片隅、宵のひととき。 語られるのは、誰かの心に静かに灯った、小さな甘やかさと哀しみ。 静謐な夜、湯気の立つ茶碗、口に含むひと匙の甘味―― 淡く切なく、どこか懐かしい余韻が、…

戦乱の大陸、ディカイア。 赤しか見えない女の振るう剣と、赤が見えない男の振るう筆。 戦乱の中で出会った二人の渇望は、狂気をはらんだ美へと昇華し、やがて命の物語となる。 それは、誰…

『生まれる時代が違えば、私はどんな人生を送っていただろうか…』 皆様、初めまして。私(わたくし)噺家をしております。中村と申します。これからお話するのは、ある屋敷に産まれた姫の…

鳥羽高校に通う二年生・火野燈の日常は、いたってノーマル。朝起きて、学校へ行って、授業を受けて友達としゃべって──。でも、深夜零時を過ぎた瞬間、高校二年生・火野燈は葬儀人・火野燈へ…

会話にするほどでもないけど、たまに語りたいことを書く。多分。 暇な人だけ読んでください。 なんかインスタグラムでやれって感じの内容がだらだら続くかも。 ※タイトル変更しま…

俺の名前は苗場芳一。『耳が良すぎてラブコメ主人公にはなり得ない‼︎』の語り部をしている。 耳が良すぎる故に第四の壁の奥から鳴る声すらも聞こえる俺だが、何やら『質問企画』なるものの…

ようこそ再び怪談ライブへ。 語り部たちが今宵も怖い話を用意してお待ちしております。 怪談Nightの続編になりますが、今回の話からも読めます。 この話は三題噺で構成されており…

私は日頃、オリジナルの異世界を舞台に物語っているのですが、私の世界はいささか複雑になりすぎた。物語を紡ぎながら私の世界の全てを語るには到底、作者の技術も読者の覚悟も足りない。 物…

代理自殺制度の運用現場では、感情を殺した職員たちが日々「希望者」の最期を見届けている。 真帆はそこで、多くの“誰にも必要とされなかった若者たち”の死を処理してきた。 ある日、若…