世界、ここに記す

竜花

世界とは、

 世界とは言わば、机のようなものだ。

 人の子をはじめとして、獣や木々、山や海、月や太陽に至るまでのが並べられた机上が、現世うつしよだ。

 光の神の住まう天界も、闇の神の住まう魔界も、それぞれ異なる引出しの中に在る。引出しの中は、光闇の所属に従ってが仕舞われており、魔界なら闇の神、天界なら光の神が、それぞれ管理している。彼らは、机上の秩序には干渉することを許されていない。

 では、机上の管理者はいないのか。答えは、否だ。秩序の神がそれに当る。彼は常に機械的に、机上に照明を当てては消し、引出しを開けては閉め、を並べては仕舞うことで、現世うつしよを循環させている。机上から認識できる最大範囲は、ここまで。

 しかし、彼は最高位の神ではない。机の所有者――机上を世界とし、ありとあらゆる駒を生み、そこに秩序を与えた創造主こそが、本当の最高神である。机の上の駒は知る由もない、机には一切干渉しない、ただ所有しているだけ、傍観するだけの存在。――いや、正確には、傍観するだけではない。

 己が創った秩序の元に紡がれる物語を、世界を、記録する者。

 要はこの、今を記している私が、最高神だ。

 伝わるだろうか。

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