「文学都市」を含む小説

稲葉和（いなば　のどか）、２０代半ば。民俗学系ライター兼編集の契約社員。 子供の頃から他人には見えない小さな神々や死者の気配を感じることができた彼女は、初めて自身の企画が通った「…

　「違いを見つけて」 深夜二時、聞こえてきたのは無邪気な子供の声。最初は幻聴だと思った。疲労とストレスが生み出した錯覚だと。しかし、子供は毎晩現れ、同じ質問を繰り返す。 …

それは、いつの間にかそこにある。 人混みの中でも、人気のない路地でも、古びたバス停でも──必ずひとりの傍らに立っている。 濡れていない地面に、ただ一つだけ残る水の輪。 紙切れに書…

「──背中に鯖の模様の入れ墨した女、見たことない？」 「鯖美って誰だよ」 「名前なんて模様みたいなもんだ」 「──お前のことだからそのうち魚でも雇うんじゃねぇか？」 「思い出そう…

──その海は、かつて失われた記憶を呼び覚ます。 九州南方の太平洋に、突如として浮上した巨大な大陸。 それは伝説とされてきた「ムー大陸」──現代文明に絶望した古代の意志が、沈黙を…

灰色の都市に沈んだひとつの部屋。 閉ざされた空間で、少年はただ「何か」を待ち続けていた。 静寂と無機質の中、動かぬ時間が流れていく。 食事すら意味をなさず、目に映る世界には色…

　自由研究で都市伝説について調べる少女、碧井夏。時代に取り残されてしまったような青年、夕。二人は時の止まった「夕暮れの社」の話を聞き、その調査に乗り出す。

あの夏、彼はただ見ていた。 焼けた肌、汗、鉄の匂い―― 誰よりもまっすぐで、眩しかった背中を。 彼の奥には、あの記憶だけが灯り続けている。 あの時、彼が何を感じていたのか。 あ…

ある朝、町は水没していた。透明な物語には空想の余地がある。

小学校５年生の頃、女子三人で「こっくりさん」をしたときの話です。鳥居は口紅、五十音表は４Ｂの鉛筆、十円玉は昭和64年。打ち付けられた木板から、廃校舎の教室に差す夕日。三人で十円玉…

とあるMMOプレイヤーによる「ぼったちさん」というプレイヤーについての思い出話です。ぼったちさんは1000以上のアカウントで、色んなゲームの色んなサーバーに同時ログインし続けた名…

放課後の教室に数人の生徒たちが残っている。 どうやら居残り組みが怪談を語っているらしい。 窓の向こうには逆光の都市が建ち並び、それが墓標のように揺らめいている。 「それじゃ…

海から遠く離れた街で暮らす女性が海に関する幻想を抱き、街の中に海を探し始める物語。 波乱は殆ど起きず、主人公の思考を追っていく、すこぶる地味な作品です。 無害な狂気を表現でき…

地元で何かが起き始めている。 人が消え、心が透けていく。 きっかけは“青いチケット”。 タウン誌女性記者はそれを追いながら、 やがて自らもその闇に飲まれていく。 大河ロマンのプロ…

八尺様のことを友人に聞いてから、どうしようもなく恋こがれてしまった。瀬戸内海の山の寺にいると云うから逢いに行こう。山の上で綺麗な小僧さんに会って連れて行ってもらうのだ。山寺の老人…

令和の街の森の生活

※残酷描写なし。ホラー描写もかなり薄めです。あしからず。 ある少年が日課の夜の散歩中に出会ったのは、姿の見えないバラバラ死体。生前の記憶を持たないという彼女が一体何者であるのか…

武蔵野市と安曇野市。友好都市間の交流を孫世代にも。

ブラジルで語り継がれている都市伝説、昔話や神話のうち、幽霊・精霊・怪人・怪物・妖怪などの「この世のモノではない」存在が登場する話を一話完結型で紹介しています。 楽しくて、ときどき…