海から大陸が姿を現すという、世界を揺るがす天変地異。
ですが、この物語の本当の戦場は、私たちの心の内側にあります。
破壊ではなく対話が、世界を動かす力となるのです。
「争いによらない解決」が、終始一貫して描かれる物語。
主人公の葵 結芽は、古代の巫女の記憶を受け継ぐ特別な力を、他者の痛みに寄り添い、理解するために行使します。
友人の蓮や、記憶を継ぐ凛、そして器の役割を担う奏も、それぞれの能力を調和のために使います。
四人の前に立ちはだかるのは、かつて文明が滅びゆく悲劇を経験し、その痛みから心を閉ざしてしまった、深い悲しみを抱える者たち。
剣を交えるのではなく、心を交わす対話が、この物語の静かな戦いです。
痛みを知り、恐れを抱えながらも、それでもなお「繋がりたい」と願う。
その選択が、読み手の胸を打ちます。
読み終えた後に残るのは、心の深い場所にじんわりと広がる、穏やかで確かな希望の光。
断絶を乗り越え、手を差し伸べる勇気こそが、世界を夜明けへと導くのかもしれない。
そんな新しい強さの形に出会える物語でした。