読書の秋にあわせて「カクヨムネクスト・秋の読書キャンペーン レビューチャレンジ」を実施いたしました。期間中には、キャンペーンへの参加を目的としたものに限らず、多くの読者から多彩なレビューが寄せられました。
本特集では、その中から特に優れた4つのレビューを「優秀レビュー」として選出し、ご紹介します。物語に寄り添いながら作品の魅力を丁寧に言語化したもの、独自の読解や視点で新たな読み方を示したもの、作者自身も気づかなかった強みを掘り起こすものなど、どれも作品と真摯に向き合った言葉ばかりで、“読書体験”の豊かさをあらためて感じさせる内容となっております。
レビューは作品の魅力を広く届けるだけでなく、作者にとって創作の励みとなり、読者同士の新しい発見につながる存在でもあります。情熱と洞察に満ちた言葉を、ぜひお楽しみください。
特筆すべきは、この文章の美しさです。
とあるとんでもない事情があり、その結果として、ヒーローがヒロインの能力を見込んで提案した形式上の婚約、言うならば(仮)といったところでしょうか。
お互いに、複雑な事情を抱えた年若い二人が少しずつ距離を縮めていく様子を、時にニヤニヤしながら、時にハラハラしながら読み進めること間違いありません。
そして、しつこいですが、美しい。描写が美しいんです。和装がたくさん登場する物語は、難しいと思うんです。和装が好きな人は、細かいから。
でも、この物語は、私の和装チェックを軽々と乗り越えました。そこもとても推せるポイントです。
そして、ヒーロー(名前は本編で確認してね)
容姿端麗。言いたい放題。高校生。属性が多すぎるにもかかわらず、強力な魔祓いの力まで持っています。
これだけのハイスペックなのに、不思議と等身大に感じられるのは、作者様の筆のお力だと思います。
一言で言うなら、恋とファンタジー、1粒で2回おいしいのです。
人類が危機に瀕した時、神によって「魔王」という存在が示唆される。
魔王討伐へ向けて人類の内で構成された「使徒」と呼ばれる存在が現れる。
人類に向けた試験として魔王の討伐を任せた神は、ある別の存在を感じ取る。
それが「魔王の味方」なる者だった。
本作では敵側として人類の姿を間近に見ることができます。
魔王となった少女には約束された残酷な運命が。
使徒や人類たちはそれを知る由もない。
そのことを知っているのは、本人と、主人公、そして神。
読み進めていくうちに主人公の思考や焦燥などがよく伝わってくる、素晴らしい臨場感が味わえます。
立たされた苦境にも抗えない現状を掻い潜ろうとする人間像をお楽しみください。
生きることは戦うこと。綺麗事だけでは生きていけないリアルさが刺さる。治安維持組織といっても正義の味方なんて輝いてるものではなく、泥臭く血生臭く狡猾に今日を必死に生きている、そんな姿に鼓舞される。弱っちいけど機転が利く、強いけどだらしないなど人間らしい登場人物に親しみが湧く。主人公フォルは縁した人やネストや街に小さな変化をもたらすのか毎話楽しみです。
呪術を用いて妖を使役した――その罪と身に覚えのない咎によって殺された「夜闇の妖姫」こと比奈子は、死ぬ四年前の時点に巻き戻り、再び目覚めた。二度目の人生を歩むこととなった彼女は決意するのだった。今生では必ず生き延びてみせる、と。
私が推したいポイントは主にふたつあります!
ひとつ目は比奈子の葛藤です。彼女は前世のように殺されないよう、目立たず、誰とも交流を持たず暮らしています。本当の自分を隠している=殺されないための役を演じながら生きているのです。また、彼女は異能や「目に入り手の届く範囲のものを放ってはおけない」性分を生まれもっています。
前世とは違った今生を歩むことにより、比奈子の中にはそれぞれにおいて葛藤が生まれます。その葛藤は時にあたたかく、時にシリアスで、人間の強さを感じるものであり引き込まれました。
ここにメイン二人の徐々に近づく距離感や成長なども含まれるのですが、そこはネタバレ無しで、ぜひ実際に読んで感じていただきたいところです!
ふたつ目はギャップです。死ぬ未来を回避したい=前世とは違う生き方をしているため、比奈子の身の回りでは、前世とは違うイベントが発生します。その前世と今世との違いが読者にとっても新鮮に思えました。
また、各キャラクターについても前世・今世の違いだけでなく、強さ・弱さといったいろんな一面が見え、グッときました。魅力が深まり、全員のことをより好きになれたように思います。
クライマックスに向かうにつれ、引き込まれる作品でした。伏線回収も丁寧で綺麗、と思いました。
また、「結び③」までで大きなプロローグにもなっている、始まりの物語であるとも感じました。
今後のドラマやまだ語られていないキャラたち等、もっと見てみたいです!
※ネクストにて「夜闇の妖姫⑧」まで+書籍版にて「結び」を読んでのレビューです。