時間があるときは映画館に行く習慣を作ろうと思っています。先日は、『ジュラシック・ワールド』と『8番出口』を観ました。平日の朝、一番早いシアターをアプリで予約していきます。座席はいつも入口から一番遠い最後列。視聴のお供はチュロスとホットコーヒーです。朝一番ですから、人気映画でも客は20人程度しかいなのでゆったりと観られます。上映時間になり館内がゆっくりと暗くなって、オープニングがはじまる瞬間の、これから別世界へ旅立つような、なんともいえないワクワク感が病みつきになります。原作小説がある作品は、できるだけ原作も読むようにしています。『8番出口』は小説で読むと、意外とキャラクターの背景がしっかりしていました。大体午前10時頃に見終わって、お昼前には帰宅するスタイルが快適なんですよね。映画を観たあとって、気持ちが高ぶりませんか? そこからちょっと仕事をやると結構捗るんですよ。やる気を呼び覚ます、よい気分転換になっていると思います。ナイトシアターやオールナイト上映もちょっと興味があるんですよね。機会があれば試してみたいなと思います。さて、この原稿が終わったら、また映画館に行こうかな。次はどの映画を観ようか。新しい楽しみを作ると、生活が楽しくなります。

ピックアップ

配信はダンジョンから 異世界美少女と配信シェアハウス生活

  • ★★★ Excellent!!!

 現代社会にダンジョンが出現して十五年。ダンジョンのインフラ整備士として働く青年・諏成入浪は、突然のリストラで職を失ってしまう。偶然ダンジョンで助けた美少女配信者ラッカリカにスカウトされた入浪は、弱小配信事務所のプロデューサーとして個性豊かな美少女たちをサポートすることに……。

 もはや定番化した現代ダンジョン配信ものですが、主人公が冒険者ではなくプロデューサーとして陰で支えながら一緒に成長していく。そこが新鮮で、読んでいてワクワクするんですよ。

 ヒロインはダンジョンの向こうの異世界からやってきた美少女たち。亡国のお姫様でちょっとポンコツなラッカリカ、酒を飲むと性格が豹変する女騎士シキータ、知的美人なのにソシャゲ廃人のクローリス、合法ロリで大魔法使いドロリーなどなど。そんな女の子たちと、社屋を兼ねたシェアハウスで共同生活というシチュエーションがたまりません。

 彼女たちは実力者ながらも配信者としては問題児。ダンジョンに潜るたびに騒動を巻き起こして、配信サイトからBANされる。でも、だからこそ面白くて、応援したくなるんですよね。配信外で見る意外な一面にも見惚れます。どの子もクセが強いのに魅力的で“推し”を見つける感覚で読む楽しさがあります。

 ダンジョン攻略と配信者ライフが絶妙に絡み合う、笑いあり無双あり色気ありの物語。あなたもぜひ、このクセ強な美少女たちを「ご視聴」してみませんか?


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)

氷の上に世界一の情熱がある。元世界王者、カーリングに挑む。

  • ★★★ Excellent!!!

 リーゼントが自慢の桐原剛士は、かつて世界を制した元ボクシングチャンピオン。しかし引退後は売れないタレントとして細々と活動している。そんな彼がテレビの企画で東北のカーリングチームに体験入団することに──。落ち目の元世界王者が、新たな舞台で再び情熱を取り戻していくスポ根ドラマです。

 鹿児島出身の剛士は、氷の上を滑った経験すらないド素人。学生相手にカーリング対決を挑むも、テレビカメラの前で無様な敗北を晒してしまう。悔しさを胸に地元へ戻り自主練習を重ねるうちに、次第にカーリングの奥深さに惹かれていく。下手でもひたむきに努力する姿が純粋で、思わず応援したくなります。

 カーリングと真剣に向き合う剛士の姿に、ゲスト扱いからチームの仲間として認められていく様子が胸を打ちます。しかし実力と経験の差は歴然。試合ではリザーブとしてベンチに座るばかり。それでも彼は腐らずに出場の機会を信じて汗を流す。年齢や過去の栄光を笑われても、ネットで醜態を晒されても、決して諦めない。そんな剛士のアスリートとしての生き様がかっこいいんです。

 何かに熱中することは、決して恥ずかしいことじゃない。情熱が人生を輝かせる。剛士の奮闘を通して、自分も何かに挑戦してみたいと思わせてくれる作品です。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)

朝は一杯の味噌汁から。朝ごはんがつなぐご近所ストーリー

  • ★★★ Excellent!!!

 上司と衝突して会社を辞めた25歳の独身女性・三瀬綾香。実家の伝手で古びたアパート『荒巻荘』の大家を任された彼女は、共用スペースで住民たちに朝食を振る舞うことに……。朝ごはんに集うアパートの住民たちの人間模様を描いたハートフルグルメストーリーです。

 朝ごはんを通じて芽生えていくご近所付き合いが優しくて、どこか懐かしいんですよね。綾香が作る朝食は、ごはんに味噌汁、焼き鮭、卵焼き、ほうれん草のおひたしといった素朴な家庭料理。どれも特別なものではないけれど、実家のお母さんの手料理を思い返して温かい気持ちにさせてくれます。

 荒巻荘に暮らすのも、ごく普通の人々。口下手だけれどゲーム配信に打ち込む宇津井さん、明るくてアウトドア好きの長岡さん、そして母子二人で暮らすOLママの日浦美穂と小学生の美咲ちゃん。最初はよそよそしかった彼らも、毎朝、同じテーブルで食事を重ねるうちに、自然と会話や交流が生まれていって、みんなで夏祭りに行ったり、海水浴に出かけたりと、まるで疑似家族のような親しい間柄になっていく光景が微笑ましいんです。

 昨今、都会では隣人の顔も知らないなんてことが珍しくない。忙しくて朝食を食べない人も多い。そんな世の中で忘れがちな「朝食」と「ご近所付き合い」の大切さを伝えてくれる作品です。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)

汗と笑顔の5日間。万博を支える名もなき人々の物語

  • ★★★ Excellent!!!

 子育てをしながら主婦として一家を支える夏目さんは、筋金入りの万博ファン。大学時代の卒論テーマが『万博とジャポニズム』だったというから驚きです。そんな彼女が大阪・関西万博でボランティアとして働いた5日間の思い出を綴ったエッセイです。

 ボランティアの視点からみた、来場客には明かされない万博の舞台裏が面白いです。

 会場案内に立てば外国人も含めて多くの人に囲まれ、質問攻めで大忙し。逆に迷子センターでは仕事がなく、ずっと立ちっぱなし。毎日大屋根リングを東奔西走。シフトを終えて夕方になると一気にクタクタに。夜空を彩るドローンショーを見上げて帰路に着く──そんな非日常な体験が胸躍るのです。

 毎日異なる場所に配属されて戸惑いや驚きもありながら、外国人観光客と写真を撮ったり、学生ボランティアとおしゃべりしたり、小さな触れ合いが温かく心に残るんですよ。

 休憩時間には友人と海外のパビリオンを巡ったり、巨大なガンダムやミャクミャク像を眺め、キッチンカーの名物料理を味わう。働きながらも万博を楽しむ姿に、「こんな楽しみ方もあるんだ」と新しい発見をもらえます。

 万博に行った人も、まだこれからの人も楽しめる体験記でした。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)