これ以上ないってくらい私事なのですが、この5月からついにスマホデビューいたしました!
とはいえ地図アプリを試してみた以外は普通の電話と同様の感じなので、まるで使いこなしてはいません。でも地図アプリ楽しいですね! スマホ傾けると地図も傾きますし!
……喜びのレベルが低すぎることは心得ておりますとも。でもまあ、わたくしにとってスマホはまさにアーサー・C・クラーク氏の明言、「十分に発達した科学技術は魔法と区別できない」なのです。そうです。スマホは魔法です! さっぱりわからぬぅ!
あ、でも飲食店さんのアプリはたくさん入れているのですよ。フェアのお報せがないといつ行っていいか、それこそさっぱりわかりませんからねぇ。
という話をいい感じに繋げられたりしないわけですが、今月は金のたまご回でございます。多様なジャンルから多彩な逸作をピックアップさせていただきましたので、どうぞ素敵な出逢いをしていただけますように。
高い能力に加え、親から莫大な財産まで受け継いでいる楠灘源蔵(くすなだ げんぞう)。しかし外見のまずさが原因で恋愛に失敗してきたことで、今は恋愛恐怖症となってしまっており、頑ななまでに孤独を貫いて生きていたのだが。13歳歳下の養女を迎えたり、彼の内面に惹かれる女性が現れたり。彼の人生も変わっていく、そう思いきや――
源蔵さんは男気溢れるハイスペック男子です。気持ちいいのですよね。金という暴力を豪快に叩きつけ、敵を蹴散らす様はまさに痛快! しかも持ち前の調理力や仕事力によるアフターフォローも完璧で、そんな彼のスパダリっぷりが実におもしろいわけなのですが。
とあることをきっかけに、物語はこれまでの展開から一気に転じるのです。正直、驚かされました。著者さんの思いきりのよさにも、そこから引かれた物語の先にも。
ですが源蔵さんが物語の焦点であり、最大の魅力である点は変わりません、彼でなければ為し得ない無双(淡い恋愛模様のトッピングつき)の気持ちよさ、どうぞお楽しみあれ。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=髙橋剛)
夏休み。祖母に傾聴ボランティアへ連れ出された志布志幸子(しぶし さちこ)は、事故のせいで首から下が動かなくなった金子美咲(かねこ みさき)の退屈な話を聴くことに。だがその最中、美咲の読書感想文を見て閃いたのだ。書きあぐねていた宿題、これを丸写しにすれば! しかし提出した読書感想文がコンクールで賞を取ってしまって……
幸子さんは自分が働いた悪事のせいで文学少女を演じるはめに陥ります。ウソを突き通すため美咲さんに頼り、それこそウソでウソを塗り固めた日々の果て、自分のついたウソと対峙するわけですよ。
この“ウソ”を中心に据えたシンプルで太いストーリーラインがすばらしいのです。でも、間に置かれた美咲さんの思い――なぜ彼女が幸子さんを助けてあげたいと思ったのか、なにより小さくありながらなにより大きな理由があればこそ、おもしろかったですだけではけして終わらせない、厚いドラマを魅せてくれる。これがなによりすごい!
読みやすさと読み応え、ふたつ同時に味わえる素敵なお話です。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=髙橋剛)
とある国立大学の学生相談室にひとつの相談が寄せられた。相談者“C”は自分と同じ法学部のゼミ生である“B”と連絡が取れず、少し心配している。ただそれだけのことだったはずが、ひとつ、またひとつと謎が増えていき、そして……
この作品、ミステリーながらホラーを思わせるモキュメンタリー形式で綴られているのがいちばんの特徴です。視点主であるCさんの文字起こしされた相談内容を軸に、合間合間へ差し込まれた意味不明の断片的資料が謎を深めていく。
流れを追うだけでも十分に楽しめるのですが、著者さんが仕掛けられた「匂わせ」がすばらしいのですよねぇ。読み進めるにつれ意味不明だった資料が真実を浮き彫りにしていき、エンディングに得も言われぬ靄めきを醸し出す風情! それでいてオープニングの様相をなんとない雰囲気ではなく、しっかりとした構成によって覆す筆の切れ味! 見事に心をかっ切られましたよ。
物語の背景にも思わず目を奪われる相談の顛末、あなた御自身の目でお確かめを。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=髙橋剛)
眼鏡屋に勤める“私”は、今日も多くのお客様と向き合う。だが、お客様は十人十色。中には普通の枠へ収まりきらない方もいるわけで。そうして出遭ったクセの強い人々を、店員の目から綴ったエッセイ。
あらすじでご紹介した通り、眼鏡屋の店員さんが遭遇した“クセ強客”さんたちのお話です。
それにしてもこの世界にはいろいろな人が生きているものですね。困った人、本当に変わっている人、実はいい人、興味深い人……“私”さんは彼らの行動を見たままに、感じたまま記しておられます。おもしろくしようと妙に盛ったりしていないからこそですよ。お客様=人間の、クセと人間性がけして見た目通りではないことが見て取れて、多様性というものを楽しめるのです。加えて“私”さんの日常がリアルに感じられるのもおもしろい。いや、接客業は本当に大変ですね。いつもありがとうございます。
眼鏡屋を舞台にした実にささやかなれど起伏に富んだ人間ドラマ、はっきり言って最高におもしろいです!
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=髙橋剛)