みんなー、悪役令嬢は好きかー!? 僕は大好きです。
 というわけで今回はドストレートに超人気ジャンルの悪役令嬢特集となりました。悪役を通り越して邪神と化した令嬢から、悪役すぎて読んでるこちらがちょっと引いてしまうレベルの令嬢、悪役令嬢に飼われる猫の視点で紡がれる物語から、死んだ後に復活する悪役令嬢まで、色んなタイプの令嬢を取り揃えました。あなたのお気に入りの令嬢を見つけてください。いずれも完結済の作品をピックアップしましたので、どうせだったら一気に最後まで読みたいというせっかちあなたも是非どうぞ。

ピックアップ

悪気はないけれどいつの間にか周囲が発狂しちゃう悪役令嬢

  • ★★★ Excellent!!!

 乙女ゲームの悪役令嬢イリスに転生してしまった主人公。だが問題が一つ。このイリスはただの悪役令嬢ではなく、人の皮を被った邪神だったのである。

 手から触手は伸びるし、カルトな思想にすっかり染まった両親は彼女を崇拝してくるし、つい気を抜けば周囲の人たちが彼女の影響で悪夢を見たり発狂してしまう始末。そんな彼女の今世での目的は、美少女な外見を活かして楽しいスクールライフを送りたい!……うーん、悪意がない分余計に性質が悪いかも……。

 存在するだけで周囲のSAN値をガリガリと削っていくものの、学園に通い始めたイリスは生徒会に入ったり、友達を作ったり、生徒の耳に触手を突っ込んでトラブルを解決したりと順調な学園生活を送っていく。このちょっとズレている日常描写が楽しいのだが、その裏側では、学園には邪神を崇める怪しげな魔女や、彼女の存在を調査しようとする探偵社の影が……。果たしてイリスは正体を隠し通してハッピーエンドを迎えることはできるのか!? そしてときどき怪しい目つきでこちらを睨んでくる生徒会副会長との恋の行方は!?

 ときどき触手や怪しげな手記は登場するけれど、やっていることは結構学園ものの王道を走る一作です。悪役令嬢やクトゥルフ神話好きな方はぜひどうぞ。


(「最近の悪役令嬢」4選/文=柿崎憲)

猫だけが全てを知っている。

  • ★★★ Excellent!!!

 一人の悪役令嬢が婚約者の王子から婚約破棄を突きつけられる……というオーソドックスな形でスタートする本作だが他の悪役令嬢と大きく異なる点は二つ。一つは婚約破棄されたはずのシアンが王子にあまりにもべた惚れで、この宣言も彼女の冤罪を晴らすためだと勘違いしていること。そしてもう一つは語り手となるのが、シアンの飼い猫スノーボールであることだ。

 この猫のスノーボールが大変可愛らしいんですよ! 愛嬌たっぷりな語り口でナチュラルに人間を見下しつつも、下僕が困っているときに安心させるのも私の仕事だと、時には人間に大人しく抱かれたり撫でられたりする寛大さもお見せになる。しかし、世間の人々はそんなスノーボールをただの猫だと油断して、ついつい自分の秘密や不安を彼女に話してしまう。

 婚約破棄を告げた王子は「シアンの自分への執着が怖い」と弱音をこぼし、聖女は「自分の思ったように事が進まない」と愚痴り、他国の王子は「自分の国にシアンを連れて帰りたい」というひそかな計画をこっそりと盗み聞きされてしまう。

 そんな様々な権謀が渦巻く城内をどこ吹く風と言わんばかりに悠々と歩むスノーボールの姿が大変微笑ましい。悪役令嬢好き、そして何より猫好きの人には自信を持って勧められる一作です。


(「最近の悪役令嬢」4選/文=柿崎憲)

その令嬢、苛烈につき。

  • ★★★ Excellent!!!

 学園の終業式で王子ロレンソから婚約破棄を宣言されたフランシスカ。その陰には転生者である男爵令嬢シルビアの思惑が隠されていた! ゲーム本編の知識を持っているシルビアはフランシスカを「悪役令嬢」と呼んでしまうのだが、その言葉を耳にした彼女は優雅に微笑む。
「本当の悪役とはどういうものか、その身で味わうと良いわ」と……。

 というわけで婚約破棄からの復讐という悪役令嬢ものの覇道を征く本作だが、何が凄いかってその復讐の苛烈さである。公爵家であるフランシスカが持つ権力は絶大で、下手すると王家以上の影響力を持つ。そんな彼女の実家はこの婚約破棄宣言を知るや否や関係した生徒たちの家に容赦ない制裁を加えていく。こうして断罪される側の視点で語られていく破滅の様子×6。読者がつい「もう勘弁してやって」と言いたくなっても、彼女の復讐はただ破滅させるだけでは終わらない。だってフランシスカは「悪役」なのだから……。

 悪役令嬢ものの中でも「復讐」という要素に重点を置いた一作。楽しい日常パートなどほぼ存在せず読んでいてほっこりすることは皆無だが、代わりについつい暗い嗤いが浮かんでしまう。

 ダメな人にはとことんダメかもしれないが、お好きな人にはたまらない劇薬注意な逸品です。


(「最近の悪役令嬢」4選/文=柿崎憲)

軽やかな悪役令嬢の激重な本心

  • ★★★ Excellent!!!

 婚約者である王子との口論の末に、処刑されることになったオリヴィア。しかし彼女が受ける処刑はただの処刑ではなく、『聖剣』による『審判の刑』。もし彼女が潔白ならば、その死体は腐ることがなく100日後に復活するというのだ。そして心臓に剣を刺された彼女の亡骸は何日たってもその美しさを保ち続ける……。

 彼女の死体がいつまで経っても変化がないことに焦り出す王子とその恋人。さらに彼女の生前の手記まで発見されたために、ある一人の人物までもがオリヴィアの復活を恐れる事態に。その一方で亡くなったはずのオリヴィアにもある心情の変化が訪れており……。

 冤罪をかけられて処刑されるという設定だけ見ると、陰鬱な内容に思われるかもしれないが、処刑された当のオリヴィアがカラッとした性格をしているせいか、読み口は結構軽め。死の直前に残された手記の文章も大変明るい……のだが、その奥底に隠されていた本心はめちゃくちゃ重い……! このギャップがとても良くて、さらにこの重い感情を他人にぶつけるのではなく、自分で吞み込もうとする姿が健気で可愛らしいのだ。

 こうして誰もが不安や困惑に陥る中で、ついに復活が約束された100日目がやって来る。オリヴィア復活の当日、彼らは何を目撃するのか!?


(「最近の悪役令嬢」4選/文=柿崎憲)