その令嬢、苛烈につき。

 学園の終業式で王子ロレンソから婚約破棄を宣言されたフランシスカ。その陰には転生者である男爵令嬢シルビアの思惑が隠されていた! ゲーム本編の知識を持っているシルビアはフランシスカを「悪役令嬢」と呼んでしまうのだが、その言葉を耳にした彼女は優雅に微笑む。
「本当の悪役とはどういうものか、その身で味わうと良いわ」と……。

 というわけで婚約破棄からの復讐という悪役令嬢ものの覇道を征く本作だが、何が凄いかってその復讐の苛烈さである。公爵家であるフランシスカが持つ権力は絶大で、下手すると王家以上の影響力を持つ。そんな彼女の実家はこの婚約破棄宣言を知るや否や関係した生徒たちの家に容赦ない制裁を加えていく。こうして断罪される側の視点で語られていく破滅の様子×6。読者がつい「もう勘弁してやって」と言いたくなっても、彼女の復讐はただ破滅させるだけでは終わらない。だってフランシスカは「悪役」なのだから……。

 悪役令嬢ものの中でも「復讐」という要素に重点を置いた一作。楽しい日常パートなどほぼ存在せず読んでいてほっこりすることは皆無だが、代わりについつい暗い嗤いが浮かんでしまう。

 ダメな人にはとことんダメかもしれないが、お好きな人にはたまらない劇薬注意な逸品です。


(「最近の悪役令嬢」4選/文=柿崎憲)

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