自分から電話をかけることがほぼなく、外出先ではノートパソコンを使って仕事やら連絡やらしているせいでずっとガラケーで生きてきたわたくしですが、ついにスマホを持つことを決めました。
これさえあれば地図アプリで現在位置がわかるし外出先で迷わずに済むのだ! と意気込んで本体だけ買ってきたのですが、未知を相手取るプレッシャーが酷すぎてルーターと繋いだだけで疲れ果て、まだどことも契約していません。というか対応機種なのかどうかもわからぬぅ。でもまあ、なんとかぼちぼちがんばります。
さて、今月は恋愛ジャンルから「片思い」、「両片思い」をテーマにした作品を選ばせていただきました。あらためて向き合ってみますと、恋愛ものの醍醐味である甘さや酸っぱさよりも、細やかで濃やかな心情劇が醸すほろ苦さを感じますねぇ。
同ジャンルの枠内にあっても味わいはまるで違う。だからこそおもしろい!
というわけで、どうぞみなさまも四者四様の片思いをお楽しみください!
イアン・マシューズとルイーズ・バークは、美貌のせいで苦労した者同士の母たちが投合し、婚約者となった間柄だ。互いに互いが「面倒よけの口実」に過ぎず、故に恋人のような振る舞いなどしたことがないし、5年も離れることとなってもまるで名残惜しさはなく、気にもならなかったのだが。再会した瞬間、始まってしまう!
ルイーズさんに対するイアンくんの心の距離の遠さが酷い! 彼女を愛してなどいないことが言動すべてからわかってしまうのですから。その悪意のなさがまた酷いのですが、ルイーズさんも概ね同様ですから問題なし? まあ、仕方ないことなのです。なにせ親が決めた婚約者同士で、それもこれも面倒よけのためと擦り込まれてきたふたりですしね。
でも、だからこそ。
そこまで積み上げられてきた「都合」が再会によって「予感」へと姿を変える、そのドラマチック過ぎるどんでん返しが最高に気持ちよく決まるのですよ!
キャラクターがいいのはもちろんのこと、構成が実にすばらしい。さくっと読めるのに満足感激高です!
(「甘いか辛いか片思い」4選/文=髙橋剛)
高校3年生の夏休み、“私”はつまらない意地と好奇心からついネットの掲示板へ『だれでもいいからキスがしたい』と書き込んでしまった。とはいえそれで終わり、そのはずだったのに。課外授業で彼女の隣に座っていた男子、真水から『オレでもいいんですか』の返信が来て……キスだけの関係を始めることとなるのだった。
物語への見事な導入にまず目を奪われる本作ですが、キャラクターの解像度が本当に高いのですよ。
主人公の“私”と真水くん、ふたりのもどかしさやとまどいが濃やかな心情劇になっていることもですが、そこへ至るまでのこと――互いに互いを見た、しゃべった、思った、果てに意識した等々、本来はなんでもないもので終わるはずだったものが、「キス」のせいで特別に成り変わってしまう。綺麗事で飾られることのない生々しさがきらめくじゃあありませんか。そしてそのきらめきこそが予感を残しつつもこの上ない終わりを物語にもたらしてくれるのですよねぇ。
噛み締めたくなるほろ苦い叙情感、ぜひ味わっていただきたく。
(「甘いか辛いか片思い」4選/文=髙橋剛)
5月某日、校舎外のベンチで趣味の独り飯を楽しんでいた遠坂緋高は、空から降ってきた桐谷香織を助けたことにより、最後に残していた大切な唐揚げを失ってしまう。打ちひしがれた彼へ詫びるため教室を訪れた香織は、代償としてなにかできることをしたいと提案。面倒がる緋高と押し問答した末、放課後の勉強会を開催することを決める。
空から女の子が降ってくるという王道ど真ん中な開幕、それを苦々しく濁らせることで先の展開への引きを作りつつ逆にキャッチーなものとする。実に巧みな構成です。
そうして始まる勉強会、香織さんは入学以来全教科で学年1位をとり続ける才女で、講義は実に難解です。でも緋高くんは彼女と向き合っていく中で「頭がいい香織さんではない香織さん」を見つけていく。そう、ごく普通の高校生女子である彼女の真実を。まさに新しい法則級の大発見ですよ。いやそれよりも最高なボーイミーツガールですよね!
緋高くんのまっすぐな思いはいったいどんな結末を魅せてくれるでしょうか? 御自身の目にてご確認ください。
(「甘いか辛いか片思い」4選/文=髙橋剛)
高校3年生に進級した咲本心花は、同級生となった黄瀬亮太に惹かれ、恋をした。クラスが離れてしまった友達たちに背を押され、少しずつ亮太へ近づこうと努力する心花。だがある日、亮太にまつわるとんでもない事実が知れてしまって……
真っ向から片思いする心花さんと友達たちの関係性が物語にとてもよく効かされている点、これこそが本作の特徴であり、魅力です。
誰しも苦しみを近しい人に救われた経験ってありますよね。心花さんと友達の賑やかでゆるい会話劇はそれだけでも楽しいのですが、亮太くんが実は、となったとき、心花さんを「振り返らせずに」踏み出させるクライマックス、これです。心を撃ち抜かれるのですよ。
それは恋愛という題材を主人公と相手ではなく、主人公とその周囲という一方向からのみ描き出し、それでいてこうも豊かでリアルな“友情”を魅せるドラマの妙。しかもこれが心花さんを凜と笑ませるエンディングへと繋がっていくのです。
心地よく力強い読後感、きっとあなたに元気をくれますよ!
(「甘いか辛いか片思い」4選/文=髙橋剛)