雛人形と聞いて、この曲くらいしか思い浮かばない私には、主人公の気持ちを理解することは到底出来ないのだろうと思います。ただ、そんな私にでも、丁寧な筆致で描かれるこの物語は、重く響いてきます。実家、義実家、旦那のリアルな描写から伝わる、主人公の苦悩や葛藤を是非読んで頂きたいです。
卓越した筆致で描かれる、匂いと質感。生活感を嫌でも押し付けられるような描写が素晴らしく、主人公の苦悶が肌に張り付くように伝わってくる。ストレスいっぱいの結婚生活の中で、心を蝕む存在として、ある「虫」を出してくる手腕も見事。立派な七段飾りの雛人形を軸に語られる、主人公の「これまで」と「これから」。重いテーマを扱いながらも、読後感は凛としていて、一人の女性の出発を心から応援したくなりました。「虫」たちの最後も非常に美しかったです。
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