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概要
夢の内容は消えても、匂いだけが残る。
恋人だったタクを亡くしてから、主人公には「こういう朝」が増えた。夢の中に確かに彼がいたのに、目覚めると内容は何ひとつ思い出せない。ただ、冷や汗と喉の渇きだけが現実を押し返してくる。無性の寂しさに突き動かされ、引き出しの奥から透明な密封パックを取り出す。そこには、洗えずに保管しているタクのシャツ。チャックをほんの一センチ開け、息を止めて匂いを吸い込むと、失われたはずの記憶が断片として点灯し始める。抱きしめ、声を立てずに泣き、そしてまた閉じる——日常の手順に擬態した、静かな儀式の物語。
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