概要
捨てるはずの手紙が、誰かの時間をつないだ。
「感情は通り過ぎる。ここは通過点」——遺品整理の現場で心を守るため、主人公はそう唱えて働く。けれど、押し入れの奥から出てきたのは“雲烟過眼”と書かれた宛名のない手紙だった。読むほどに、書き手が忘れたかったのは相手ではなく、呼べなかった名前だとわかる。さらに封筒の内側には、消えかけた電話番号と「もしまだ、つながるなら」の文字。踏み込めば、他人の人生に触れてしまう。踏み込まなければ、空白は燃える。迷いの末に押した通話ボタンが、届かなかった想いに“宛先”を与える。通り過ぎるものの中で、通り過ぎてはいけないものを拾い上げる短編。
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