Jの繋がり
詣り猫(まいりねこ)
Jの繋がり
渋滞も重なり、車内の空気はより重くなっていた。
純貴が私のことを楽しませたかっただけなのは分かる。でもやっぱあり得ない。お化け屋敷の中で、お化け役や仕掛けよりも脅かしてくるのだから。さらに泣きべそをかいている私を見て、指をさしながら笑ってきた。それで喧嘩した。
(許せない……)
でも、さすがに可哀想か。普段底抜けに明るい純貴が谷底シュン太郎になり、黙ってハンドルを握っている。
私は気まずさに勝てず、助手席でスマホを何となく触った。
検索履歴にあったmbti診断をタップする。候補の中に、mbtiに似た別の診断も出てきた。
16種類あるタイプはアルファベット4文字で表されているので、その辺は似ている。ただ質問が10問だけだったので、こちらの方がやりやすそうだ。
質問1「あなたは、なに投げなに打ち?」
「ちょっと何なのよ、この質問」
思わずにやける。
純貴は突破口は「ここだ!」と思ったのか、真顔を解き、すかさず聞いてきた。
「なに見てるの?」
「mbti診断っぽいやつ。1問めの質問から変でさ。あなたは、なに投げなに打ち?だって」
「何だよそれ」と純貴は笑った。 私は頭の中でシュミレーションし、おそらく「右投げ右打ち」だろうなとそれにした。
純貴はふざけて「投げない」を選んでいた。
何だかんだでこの『なんちゃってmbti診断』が盛り上がり、喧嘩したことすら忘れていた。
診断結果は純貴が『TKDJ』だった。
【明るくおおらかで社交的な人物です。その場のノリで嘘をついたり、すぐにふざけるのがたまにキズ】
「合ってんじゃん」
私がそう反応すると、純貴は「イェーイ!」と大声で叫んだ。ちょうど駅前のスクランブル交差点のあたりで停車しているときだ。
信号待ちをしている人たちが一斉に私たちの車を見てから、目を逸らす。
「怖いな〜……恥ずかしいから止めてよ」と怒った。
「悪い悪い、潤奈の診断結果は?」
こいつの半笑いが腹立つが、なんか憎めない。
「私は『INGJ』。繊細でセンシティブな人物。占いなど、スピリチュアルな世界を好み、ミステリアスな雰囲気が魅力です──だって」
「合ってるわ。それっぽいよ」
「ほんとに? 相性見てみよっか。ちょっと怖いな〜」
『TKDJ』男性×『INGJ』女性
【真逆の2人ですが、お互いに補完しあえる良い関係。アルファベットの最後がどちらもJなので、見えない赤い糸で繋がっています──】
「相性90点だよ!」
私は今日イチのテンションで喜んだ。このときの純貴は「しょせん占いだろ」と笑った。
しかし私たちは、その翌年の同じ季節に挙式を上げた。
『高間純貴』と、私『稲沢潤奈』はめでたく夫婦になったのだ。
私たちはしょーもないことですぐに喧嘩しては、すぐに仲直りするどこにでもいる夫婦だ。
私が皿洗いをしていると、テレビの音と旦那の笑い声が流れてくる。
いい加減な芸風のタレントが、怪談師の話の邪魔をするという内容のバラエティー番組が放送されていた。
怪談師は邪魔をされて「怖いな〜、怖いな〜」を連呼している。
「アハハハハ」
純貴の笑い声がうるさい。たまには家事も手伝ってほしい。私はイライラしたが、あいつは憎めないし、許してしまう。
Jの繋がりは、切っても切れないものなのだ。
終
Jの繋がり 詣り猫(まいりねこ) @mairi-neko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます