概要
硝煙にペンを削れ。数字は嘘をつかず、泥のスコップは道を作る。
一八〇五年、オーストリア。
大陸軍(グランダルメ)一兵卒のジャンは、泥濘(でいねい)の中を這いずっていた。
かつて現代日本で物流現場を支え、謝罪メールに命を削ったサラリーマンだった男は、飢えに負けてナポレオン軍の赤紙にサインしたのである。
彼が持つのは、支給された銃と、自ら短く切り詰め研ぎ上げた一本のスコップ(短円匙)。
そして、十九世紀の人間には「魔法」にも等しい、正確無比な事務能力であった。
乱雑な帳簿を整理し、暗算で砲弾の射程を導き出し、歴史の知識で偽の命令書を見抜く。
「数字は嘘をつきません。現場の混乱を収められるのは、この戦場の全体像を記録している私だけです」
アウステルリッツの太陽が昇る時、一人の代筆人(スクリヴナー)が綴る記録が、歴史の奔流を書き
大陸軍(グランダルメ)一兵卒のジャンは、泥濘(でいねい)の中を這いずっていた。
かつて現代日本で物流現場を支え、謝罪メールに命を削ったサラリーマンだった男は、飢えに負けてナポレオン軍の赤紙にサインしたのである。
彼が持つのは、支給された銃と、自ら短く切り詰め研ぎ上げた一本のスコップ(短円匙)。
そして、十九世紀の人間には「魔法」にも等しい、正確無比な事務能力であった。
乱雑な帳簿を整理し、暗算で砲弾の射程を導き出し、歴史の知識で偽の命令書を見抜く。
「数字は嘘をつきません。現場の混乱を収められるのは、この戦場の全体像を記録している私だけです」
アウステルリッツの太陽が昇る時、一人の代筆人(スクリヴナー)が綴る記録が、歴史の奔流を書き