第2次世界大戦末期を描く作品として、戦後長らくタブーとされた禁断の戦略。
核抑止論に対する盛大なアンチテーゼであり、相互確証破壊による安全保障の儚さを象徴する2発のバレットオブシルバー。
不必要な悲劇そのものであるかの空襲について、ようやく消化が成されたのだと思料する。
あるいは、預言としてのリーサルウェポンであろうか。
知り得る限り、最も人的資源を数字として扱うことが出来るだろう都市破壊爆弾の極致であり、神の焔と湛えられる日差しの中に大日如来の後光があるいは終末の空に青く焼き付く災厄の鑑。
それぞれのキノコ雲に何を映すものであれ、それはただの大きな大きな爆発に過ぎない。
やがてあるだろうツァーリの降臨、恐ろしくも美しい大輪の徒花が既に心すら躍らせる。
暴力は全てを解決し、破壊は全てを解消し、それでも地球は回っていく。
戦争は格差を是正する、誰も彼もが死なば仏、諸共に崩れ落ちるコンクリートの墓が抱えた富はそのまま失われるから貧富の差は生まれない。
生きているだけで丸儲け、まさしくその通りである。
有機交流電燈は焼け野原が地上に散らばる星屑の欠片を彷徨う。
生きながらにして幽鬼のよう、死に損なったが故に猛独に浸る。
イーイコールエムシースクエアード。
極光の錬金術が齎す芸術作品。
ヒトラーがベルリンを見事な芸術に塗り替えたように、ナポレオンがヨーロッパに驚くべき芸術を施したように。
世界の破壊を叶えるだけの、人による営みの愛すべき愚かしさについて。
神聖なるものの歌。
存分に美徳に抗うがいい、思うまま悪徳に耽るがいい。
この世は無為、規範は巡り、人は祈る。
命は、こんなにも美しい。
史実の戦争を題材にしながらも本来の歴史の流れとは一部違った条件を加えることで、歴史のifを描く架空戦記もの。太平洋戦争を扱った場合、敗色濃厚の日本をいかにして逆転させるかというのがポイントになるが、本作ではなんとアメリカに先駆けて日本が核爆弾の開発に成功するというとてつもない逆転劇が描かれる!
現実の戦争では最後の最後にダメ押しとして日本に投下された核爆弾だが、本作の核は日本が逆転への足がかりとして放つことになる。劣勢の戦況を覆さなければならないのだから、当然一発や二発で済むはずがない。
まずは硫黄島、そして太平洋沿岸で反撃の狼煙として上がるキノコ雲。この勢いでアメリカ本土への爆撃も視野に入れる日本だが、一方でマンハッタン計画を進行中だったアメリカも「核には核を」という姿勢で日本への反撃を試みる。
こうしてかつてないスケールで始まる全面核戦争。相互確証破壊なんて概念はなく、決戦兵器であるはずの核爆弾が通常兵器のごとく惜しみなく放たれる光景は、おぞましくも実に壮観。
戦場ごとに視点人物が切り替わり、特定の誰かが主人公というわけではなく、言うならば核爆弾こそが主役ともいえる本作。地獄への道をひたすら突き進むこの世界にどのようなピリオドが打たれるのか、狂気の歴史の証人として見守っていきたい。
(「歴史を感じる4作!」/文=柿崎憲)