もうギャルゲーの主人公は嫌で普通の世界に行ったのに、なぜかモテます

ここグラ

俺はもう普通の男子高校生だ!! 義妹とイチャイチャなんてしないぜ!!

「よっしゃあ!! これで女の子にモテなくて済むぞ!!」


 俺は両腕を突き上げ、歓喜の声をあげた。思春期の男子とは思えない台詞だが、これには理由がある。俺はどうも、ギャルゲーの主人公らしい。それだけ聞くと世界一の幸せ者に聞こえるかもしれないが……現実にはそうではない。


 毎日女の子達に振り回され、彼女達の困難に立ち向かうために時には命の危険に晒されることもあり、男子連中には目の敵にされる。正直うんざりだった……そんな時、謎の光に包まれて、気が付いたらこの世界にいたのだ。どこなのかは分からないが、少なくとも俺がいた世界ではない。つまり……俺はもう普通の男子高校生なのだ!!


「さて、まずはこの世界のことを把握しないといけないな。見たところRPGの世界とかじゃなくて、現代日本っぽいけど……そうだ、まずは自分のことを知らないと」


 部屋の中を調べると、生徒手帳が見つかった。俺と同じ高校2年生、名前は……河地賢介かわち けんすけか。家族関係とか友達関係とかも把握しておかないとな。スマホが見つかったので、電話帳や写真、メール、LIGE、メモ等を調べて凡そのことは把握した。


「両親は海外出張中、妹と2人暮らしか。何だかギャルゲーの主人公みたいな奴だが……まあ、案外珍しくもないのかもな」


 となると、妹も義妹の可能性が高いな。ま、イチャイチャなんてするつもりないけど。俺は普通の男子高校生としての生活を送りたいのだ、男友達と遊んで女子とは友達として話す、これで良いんだよ。


 言っておくが俺は男色の趣味はないし、普通に女の子が好きな健全な男子だ。だけど彼女は一人で良いし、大きな困難の壁にぶつかるなんていらない。可愛い子と普通の平和な恋愛をする、これぞ健全な高校生活!! よし、時間的にそろそろ登校だな、リビングに行こう。


「あ……兄さん」

「おはよう璃々りり、朝食は良いのか?」

「うん、もう済ませたし」


 河地璃々かわち りり……俺の妹らしい。うーむ……可愛い!! 恋人同士にならないにしても、やっぱり妹は可愛いに越したことはないな。ちなみに、通ってる学園は同じで一年生だ。


「えっと……今日も一緒に登校する?」


 今日【も】ってことは……いつも一緒に登校しているってことか。そりゃまずいな、璃々の好感度が上がっちまう。義妹攻略は男の夢かもしれないが、俺の場合は違うんだ。


「いや、別で良いだろ」

「え……どうして?」

「どうしてって、もう高校生なんだから、兄妹一緒にとか恥ずかしいだろ?」

「で、でも私と兄さんは義理の兄妹だし……あの法律もあるでしょ?」

「そういう問題じゃねえだろ。大事なのは、璃々がどうしたいかだ」

「……分かった。じゃあ、友達と一緒に行くね」


 そう言って、璃々は家を出て行った。やはり義妹か……でも、これなら恋愛イベントは起きずに済むな。うむ、兄妹はこれで良いんだよ、普通の健全な関係。しかし、法律とか言ってたな……登校しながら、ちょっとスマホで調べてみるか。


***


「な……何だよ、恋愛が成績に反映される法律って。おかしいだろ」


 学園に着き、教室の机に突っ伏して俺は小声で呟いていた。さっき璃々が言っていた法律……少子化対策らしいが、正直狂ってると思う。カップルを作って写真や動画を記録として残してレポート書いて、それが恋愛という科目の成績として評価されるらしい。


「だから元の賢介は璃々と一緒に登校してたのか……義妹と恋愛ってのは、手っ取り早そうだしな。クラスの連中が妙に恋愛話ばかりしてるのも、それが理由か」


 まあ、勉強して成績上げるよりも楽そうだから気持ちは分かるが……俺は嫌だな、そんな恋愛を道具みたいに扱うの。何にせよ、それなら男子と遊びたい俺なんか女子は相手にもしないだろうし、逆に好都合かもな。


「おう賢介、今日も帰りは璃々ちゃんと一緒か?」

「いや、特に考えてないが」

「へ……良いのかよ、あんな可愛い璃々ちゃんとデート出来るんだぞ?」

「璃々だって友達と遊びたいだろうし、放課後まで兄妹一緒なんて嫌だろ」


 こいつは大瀬戸おおせと、スマホで調べたところ悪友らしい。しかし元の賢介、帰りまで一緒に帰っていたのか……璃々の自由も考えてやれよ。


「そっか……まあそれならいいけど」

「それより大瀬戸、放課後一緒に遊びに行こうぜ。ボウリングとか、カラオケとかさ」

「お、良いね。それじゃ、他の野郎共も誘っておくわ」


 そうそう、これだよ普通の男子高校生の生活。男子と一緒に馬鹿騒ぎする、これが楽しいんだよなあ。


***


「いやー、楽しかったな」

「おうよ、最近はみんな恋愛ばっかりでこういう機会あまりなかったからなあ。ありがとな賢介、誘ってくれて」

「俺の方こそ、ありがとな付き合ってくれて。あれ、向こうから来るのは……璃々?」

「兄さん、どうしたのこんなところで」

「友達と遊んでたんだ、璃々は?」

「私も同じ。その……せっかく会ったんだし、一緒に帰る?」


 またか。ギャルゲーなら一緒に帰る一択なんだが……璃々と恋人同士になるつもりはないし、となると断るしかないな。


「いや、せっかく友達と一緒に来てるんだしさ、俺のことは気にせず遊んでいけよ」

「え……良いの?」

「当たり前だろ、そのためにここに来たんだろうしさ」

「……分かった、じゃあそうする。またね、兄さん」

「おう!!」

「お兄さん……ありがとうございます」


 璃々の友達らしき女子生徒が、俺に頭を下げてお礼を言った。うーん、感謝されるようなことをした覚えはないんだけどな。


***


 家に帰り、俺は璃々と一緒に夕食を食べていた。璃々の手料理は美味しい、持つべきものは家庭的な妹だな。璃々の表情も朝見た時より楽しそうに見える、放課後友達と遊んで余程楽しかったんだろう。


「ご馳走様、美味しかったよ璃々」

「お粗末様。まだ寝るには早いけど……どうしようかな」


 ふむ、義妹との夜か……定番なのは、一緒にお風呂とか着替え覗きイベントとかだな。それらを回避するには……よし、これで行こう!!


「勉強、一緒にしないか?」

「え……良いの?」

「ああ、教えてやるよ。一応、上級生だしさ」

「じゃあ……お願い」


 完璧だ、勉強に色気なんてゼロだから恋愛イベントに発展しようがないからな。俺と璃々は普通の兄妹、俺はただの妹想いの兄だ。


***


 璃々との勉強が終わった後、俺は自室で今日の出来事について思い返していた。


「今日は楽しかったな。久々に男子連中と思いっきり遊べたし、璃々とも思ったより早く打ち解けてきてるし。この世界に来て、良かったかもな」

「いや……油断はしない方が良いか。幼馴染にクラス委員長、可愛い後輩、甘々な先輩……いくらでも定番の属性はいるからな。誰が来ても恋愛回避できるよう、気を引き締めないと」


***


~璃々視点~


 璃々は自室のベッドに横になり、ボーっとしていた。


「今日の兄さん……優しかったな。私のことを第一に考えてくれて……何だか昔の兄さんに戻ったみたいだった」

「あの法律が出来てから……兄さん、強引に一緒に朝登校しようとしたり、一緒に下校しようとしたり、家でも変にスキンシップしようとしたりするようになって……何だかちょっと嫌だった。成績を上げるための……道具にされてるみたいで」

「兄さんだけじゃない、学園でも無理に恋人作ろうとする人が多くなって、何だか恋愛が楽しい物じゃなくなっちゃった気がする。男子も女子も、お互い成績の為に利用し合っているみたいで……」


 璃々は悲しそうな目をして、最近の学園での出来事を思い出していた。


「でも、今日の兄さんはそういうのは全くなかった。朝は久々に友達と登校出来たし、放課後は友達と思いっきり遊べた。一緒に勉強している時も、いやらしい目とかは全然向けてこなかったし」

「やっぱり……兄さんは兄さんだったのかな、最近はちょっと周りに流されていただけで。もしそうなら私……やっぱり兄さんのことが」


 璃々の頬がほんのり赤みを帯びている。その表情は誰が見ても……恋する乙女だった。




~あとがき~


読んで下さり、ありがとうございました。


わけが分からない作品が始まりましたが、全5話で完結の予定です。


それでは、これからよろしくお願いしますね。

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もうギャルゲーの主人公は嫌で普通の世界に行ったのに、なぜかモテます ここグラ @kokogura

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