俺と彼女の、0(ゼロ)カ国語翻訳
乃東 かるる
世界一、愛が伝わらない誕生日
「……これを受け取ってください」
家で二人きり。
同い年の大好きな少女、ユキが差し出してきたのは、見たこともない奇妙な「首輪」だった。
黒い革製で、中央には小さなマイクとスピーカー。
「それをつけると、貴方の『本当の気持ち』が聞こえるようになるんです。魔法の道具なんですよ〜」
彼女は俯き、指先をモジモジさせている。
(まさか、俺の心の声を聴きたいと!? 首輪とは斬新だけど、可愛すぎるだろ!流石は俺が大好きなユキ!)
俺は期待に胸を膨らませ、その「魔法の道具」を自分の首に装着を許した。
意を決し、全身全霊の愛を込めて、彼女を見つめ叫んだ。
「にゃん!にゃーーーんにゃー!!(ユキ、大好きだ! 結婚してくれ!)」
と叫んだ。
その瞬間、俺の首元から機械音声が響き渡った。
『腹減った。高級マグロのフードを要求する。あと、その辺で爪を研がせろ。人間』
「すごい!本当にわかるんだ!ミー太の言葉が、わかるなんて素敵ね!ミー太の今日は一歳の誕生日だもんね。いつも可愛いね」
ユキは可愛らしく笑って「ちょっとまってねー」と、いそいそとマグロのパウチを開けてお皿にほぐしてくれている。
ちがうよ、ユキ。俺、ユキのこと大好きなんだよ!ずっとずっと好きなんだよ。好きだよって言ったんだよ。プロポーズしたのに!
なんだよ、この機械!全然ユキに伝わらないじゃないか!バカバカ!
「にゃんにゃんにゃん!(俺は君を守る男になりたいんだ! ご飯の話はしてないよ!)」
俺の首元からは、また
「撫でて。ただし腹は触らないで」
という機械音声が虚しく響いていた。ユキはにっこりとして頭を優しく撫でてくれた。
違うんだ……ユキ、俺は……俺は……。
俺だって、もう一歳。人間なら十六歳だ。ユキ、君にふさわしい男になりたいんだよ。
俺と彼女の、0(ゼロ)カ国語翻訳 乃東 かるる @mdagpjT_0621
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