さよなら僕の黒ウサギさん

独立国家の作り方

黒い子猫

 僕は君の事を、同じだと思っていた。


 僕は小さい。

 僕は黒い。

 僕は猫


 君は小さい。

 君は黒い

 君はウサギ


 一目見た時から、僕の心は君に奪われてしまった。

 君も僕を見てくれたね。 

 

 僕たちが恋に落ちるのに、いくらも時間を必要としなかった。


 僕たちは将来を誓い合った。

 

 子供はきっと、二人にそっくりで、小さくて黒いよ。

 双子がいいな。

 一人は丸顔、一人は耳が長い。


 僕たちはいつまでもそんな話をしていたね。

 夜が更けても、二人はいつも一緒だった。


 二人で居ることは自然な事だと思っていた。

 心がポカポカと温かくて、お互いを温め合う。

 それがずっと続くんだと思っていた。

 

 でも違った。


 僕は猫で君はウサギ。


 種族が違うって、周りは僕たちの交際に反対したんだ。

 あらがった。

 種族の違いなんて些細な事だって。

 愛があれば、種の違いなんて乗り越えられるって。


 でも、誰もそんな話に耳を傾けてくれなかった。

 両親はウサギを否定する。ウサギを憎む。

 猫の一族とウサギの一族は、昔から因縁の関係なんだそうだ。

 親戚に顔向け出来ないと落ち込む母。

 みんな「常識」や「普通である事」を好む。

 僕はだんだん、大人が解らなくなっていった。

 常識ってそんなに大事?

 非常識って、罪悪なの?

 僕たちは黒いよ。

 僕たちは小さいよ。

 

 でも、違うんだって言われた。

 



 ごめんね

 僕たちは結婚出来ないらしい。

 

 本当はね、君を連れて逃げようと思っていたんだ。

 この世界のどこか、僕たちを受け入れてくれる世界を求めて。

 そんな世界があるって信じて。

 でも、そんな世界は無いらしい。


 僕は知った。

 もう、腕の中に君の温もりを感じることは無いんだって事。

 

 だから、旅に出ることにした。


 君の幸せを、心から祈って。

 僕が近くにいれば、君はきっと不幸になると思ったから。

 君が大人達の「常識」と言う魔物に、押し潰されて行くのを見たくなかったから。

 君の澄んだ瞳を、にごす悪から守りたいって思ったから。


 目を閉じれば、まだ隣に君が居るみたいだ。

 長くて綺麗な黒い耳。

 僕は多くを望んでいたわけじゃないんだ。

 ただ、隣に居てくれればそれで良かった。

 だから、君が隣に居たあの時間が、その思い出が、僕の一番の宝物だよ。


 夜汽車に揺られ君を想う時、車窓から見える生まれ故郷は、涙で滲んではっきりと見えなかった。

 

 遠い旅の空で、ただ君の幸せを願っている。

 僕なんかより、もっと良い男を見つけてほしい。

 そして、どうか僕の事を忘れてほしい。



 さよなら、僕の思い出。

 さよなら、僕の黒ウサギさん。

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さよなら僕の黒ウサギさん 独立国家の作り方 @wasoo

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