握手をしよう。

 「アイヤァァァァァァァァァ!!!我……我喜欢你――――!!!! 」


 「Ωαααオーメイガー!!!Είσαι στην καρδιά μου――――!!!!」

 

 思い思いの丈を叫びながらも、皆、最後まで握手をやり遂げることは叶わなかった。

 (両手を添えてニッコリ笑う、というのが礼儀らしい)


 魚人は美味しく焼かれ、木人は木炭人となっていく……。


 「さあさあ、シルヴィアちゃんと握手できるものは他におらんのかぁ!彼女と仲良くなれる機会だぞよ!チェキも夢ではない!」

 周囲の者共を煽る魔法使い。


 が、皆は焼け焦げる音と匂い、そして握手時の叫び声に、すっかり心を挫かれていた。


 冷え切った河原に、パチパチとシルヴィアの火花だけがこだまする。


 この状況は、僕にとってはチャンス到来かもしれない。

 「……おい、魔法使い!僕にも握手をさせろ!」


 僕は魔法陣に囚われながら、懸命に叫んだ。


 が、魔法使いは相変わらず冷めた目で僕を見つめて、

 「流星印なき者に、参加を認めるわけにはいかん。どうせ貴様は、科学的な思考の持ち主であろう。そんな人間はシルヴィアちゃんを傷つけるだけだ」

 

 博士の顔が、ふと浮かんできた。

 きっと魔法使いは、僕が博士と一緒に暮らしてきたことに気が付いたに違いない。


 魔法使いはさらに追いうちをかけるように、

 「お前たちのような輩は、シルヴィアちゃんを一個人として認めようとはせず、何らかの発火現象として片付けてしまうのだ!そんな奴に握手の資格などない!」


 「ち、違う!科学的思考を持っていたとしても、彼女とお知り合いになりたい気持ちは本物なんだ!」


 「気持ちではどうにもならんよ。行動だけが全て」


 「それじゃあ握手させてくれよ!きっと耐えてみせるから!」


 「ワハハハッ!科学的な人間ごときが身体的苦痛に耐えられるとでも!?」


 「耐えられるさ……それが、恋の力だ……」


 「ふっ、バカバカしい!何度も言うが、流星印を持っていない者に――」


 「持っておるぞっ!!!」


 その時、遠くから嗄れた声が響いた。

 僕の体がピクリと反応する、聞き覚えのある声が……。


 「は、博士!」


 「火の玉などほっとけと言うたのに……タワケめ」

 博士は流星印を掲げながら、こちらに近づいてきた。


 魔法使いは博士の姿に、目を丸くさせる。

 「あいつは!絶滅危惧種『頑固親父グレートストーン』……!」


 声を荒げる魔法使い。


 「今更、何用だ!科学的なヤツめ!」

 そう叫び、手のひらから電撃を放った!


 「ふん!」

 博士は絶縁体で製作された傘を開いて、電撃を防いだ。


 「バカな……我が電撃が!」


 博士は傘を静かに閉じて、魔法使いを睨みつける。

 「握手会と称してシルヴィアに耐えられる逸材を探し出し、そいつともどもシルヴィアを我が物とするつもりだったな……自分ではシルヴィアを制御できないばかりに!魂胆が見え見えだ、タワケめ!」

 

 博士は一気に間合いを詰めて、魔法使いの脳天に頭突きを食らわせる!


 魔法使いはその場に崩折れ、気を失った。


 それと同時に魔法陣の効果が無くなったか、僕の体が徐々に軽くなっていく。


 「おや、これでは流星印を持ってきた意味が無くなってしもうたな」


 そう言いながら、博士は流星印をシルヴィアに向かって投げる。


 シルヴィアはそれをキャッチ。

 そして、力を取り戻したように勢いよく燃え上がり、流星印を消し炭にしてしまった。


 燃え盛る炎が、徐々に人間のような形になっていく。

 そして、

 「久しぶりじゃん、『頑固親父グレートストーン』」 


 「その呼び方はよせ、『電光石火』初代総長め。どうして魔法使いなんぞに捕まった」


 「魔法使いとは、同じ秩序コスモスに生きる者同士なんよね。結局は私の力を操ろうとする輩にすぎなかったから、逃げ回ることになっちまったけど。魔法陣を仕込んでやがって」


 「……科学側にも、そういう卑怯者はたくさんおるよ」


 僕は二人の会話に、僕はただ呆気に取られていた。


 が、思考回路をどうにか働かせて、

 「二人とも、知り合いなんですか!?」


 「そうよ、博士こいつとは腐れ縁で、この河原で決闘する日々だった。非科学的なものは認めん!ってばかり叫んでたっけ」


 「認めん、とは言っとらん。非科学的な事象はすべて科学的な説明を待っているにすぎん、と言ったまで」


 「ね、聞いた?でしょう、こいつ」


 何を!と博士は癇癪を起こした。


 僕と彼女は思わず笑ってしまった。

 博士の性格は昔からずっと変わらないらしい。


 「あんた、私と気が合うね。石頭はかせとはどういう関係?」


 その質問には、博士がキラリと目を光らせて答えた。

 「こいつは、わしの息子も同然の完全自立思考型β-45タイプの……」


 「石頭、うっさい!……まあ何でも良いわ。友達になりましょ」


 そう言ってシルヴィアは燃え盛る手を伸ばした。


 僕は迷うことなくその手をとり、ニコリと笑って握手をした。


 僕はロボットだ。

 1000℃くらいまでなら、どうってことはない。


 

 

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握手をしよう ファラドゥンガ @faraDunga4

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