第2話 アオイくんの舞台

 アオイくん出演の舞台。

 それをご褒美に仕事をこなし、やっとたどり着いた劇場。

 そこでわたしは、舞台上のアオイくんを見上げていた。

 もちろん、バッグの中にはアオイくんの手がいる。


 金髪のかつらをかぶったアオイくんは、もはや美しかった。

 そして不思議だった。アオイくんには、右手がある。どうしてだろう。

 わたしはアオイくんに語りかける。ねえ、あなたの手は、わたしと一緒よ。


 その瞬間、アオイくんがわたしを見た。優しくほほ笑み、語りかける。

 愛しい人、そんなところにいたんだね。ずいぶん捜したんだよ。


 アオイくん! アオイくんああ、彼もわたしを捜していたのだ。それであの画材屋さんに手を置いて行ったのだ。

 わたしなら、きっとあそこに現れると思って……。


 アオイくん! たまらず叫んだ声に、隣の女が身体を揺らした。

 アオイくん! アオイくん! わたしの声に、照れくさそうに笑ったアオイくんが、舞台袖に歩いて行く。

 静かにしてと言った女に、わたしは笑って見せた。

 今の見てた? 嫉妬は見苦しいわよ。


 女はなにかに酷く驚いたような、それでいて怖がるような顔をしてそっぽを向いた。

 そう、自分の負けを認めるのが怖いのね。アオイくんに選ばれたのはわたし。


 だってわたしは、もうすでにアオイくんの右手と一緒なのよ。


   * * *

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