第2話 振り返らなかった背中

僕は戦地に立った恐怖で脚が震え、鼓動と呼吸が早くなる中、

僕はお父さんの優しい微笑みを思い浮かべ、覚悟を決める。


僕はミサイルが着弾する衝撃と爆発、銃声の中を必死に走った。

仲間と共に戦った。

すると、20m程先に佇む人影が見えた。


僕はライフルを向けたが、それは兵士ではなかった。


「なにをしている、ここは戦場……」


そのひとは、優しく微笑んでいた。


すると僕の近くにミサイルが着弾し、被弾してしまった。

僕は数メートル後方に吹き飛ばされた。


身体中が痺れ、手足の感覚がない。

お父さんとの思い出が、走馬灯のように駆け巡る。


そうか。

あのひとが旅人。

お父さんの言ってた通り、幻じゃなかったんだ。

本当にいたんだ。


その姿は、お父さんの言った特徴に全て当てはまっていた。

歳は僕と同じくらいに見えた。

そして、微笑んでいた。


戦争に意味はない。

どれだけ人間が戦争を起こしても、

どれだけ人が犠牲になっても、

あのひとや地球にとっては、

全て無意味で些細な、日常の一瞬の出来事なんだろう。


彼の微笑みの意味を、今すべて理解することはできない。

だから次、またどこかで会えるなら、

お父さんに土産話できると良いな。







息子を見送ってから、しばらく経った日。

ドアをノックする音が聞こえた。


脳裏によぎる嫌な予感で、吐き気を催す。

手足が震え、額に冷や汗をかく。


恐る恐るドアを開けると、

そこには二人の制服を着た男が立っていた。


耳鳴りがし、息子との会話が脳を駆け巡る。

外には子供達の走り回る姿や笑い声がある。

ごく普通の日常。


だが、目の前には受け入れ難い現実。

普通の日常が壊れる音がする。


男の硬い声が、日常の崩壊を加速させる。


「合衆国陸軍長官に代わり、お伝え致します。

ご子息、ジャック・トールマン一等兵は、

2014年1月13日、ポーランドにおける敵のミサイル攻撃により、

戦死されました。

大統領、ならびに合衆国陸軍を代表し、

ご家族に心よりお悔やみ申し上げます」


私は泣き崩れた。


その後、何時間も泣き、

その日のことはあまり覚えていない。


それから数日が経った日、ジャックに会った。

だが、そこにジャックは居なかった。


あるのは、星条旗の厚い布と鉄の箱だけだった。


そこから数週間か後、

ジャックの遺品が届いた。


皺クチャになった予備の靴下、制服。

そこには確かに、ジャックが帰ってきた。

そう感じさせるものがあった。


あの日のように、目に涙を浮かべながら微笑む。


「な?本当にいただろ?

今度、土産話でもゆっくり聞かせてくれ。

だから今は、ゆっくり休め」


「お前は父さんの誇りだ。

お帰り、ジャック」

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不可侵の微笑 ―戦場で、彼はなぜ笑ったのか― @Mymind

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