不可侵の微笑 ―戦場で、彼はなぜ笑ったのか―

@Mymind

第1話 見送る朝

塹壕戦の中、咆哮や激しい銃声、爆発音が飛び交う。

仲間や敵の死体が当たり前のように転がっている、何とも残酷で衝撃的な光景。

それ以上に、私が見たあれは———



(言いかけて、夢から目が覚める)


ベッドから降り、コーヒーを入れ、テレビを付ける。


「いつになったら終わるのかの」

「今日は息子と私にとって大事な日だ、ちゃんとせねばな」


「お父さんおはよう」

「おはよう、ジャック。朝ご飯、なに食べたいとかあるか?」

「いつもので大丈夫だよお父さん。気を遣わなくていいから、普段通り過ごそう」

「でも、良いのか本当に」

「平気だよ」

「そうか、じゃあお前がやってるあのゲーム、一緒にやるか!」

「最近はもうやってないよ」

「じゃあ、さっさとご飯食ってゲームやりに行くぞ」

「うん、まあ良いけど」


内心、少し嬉しそうな顔をする。


二人は朝食を食べ終え、ゲームを始める。


「難しいなこれ」

「ここはこうすれば行けるよ」

「本当だ!お前天才だな、さすが我が息子」


息子は嬉しそうな顔をした。

しばらく二人はゲームを楽しみながら進めた。


その後ランチを食べ、その日の終わりまで残りわずかとなった。


「ディナーはどうする?外にするか?」

「お父さんのミートローフが食べたい」

「分かった、任せろ!」


作り終え、食卓に着く。


「お父さん、前に話してくれたあの幻の旅人の話、聞かせてよ」

「良いのか?こんな話を前日に」

「聞きたいんだ、聞かせてくれよ」

「分かった分かった」


「あれはお父さんが兵士として戦場で戦っていた時だった。

身体中泥まみれで、周りから激しい銃声や咆哮、爆発音が聞こえる中、

仲間が敵兵かもはや区別もつかないほどの死体の山を、必死に駆けていた時だった。

私には残酷で、夢かと疑うほどの衝撃的な光景だった。


だが私の目には、それ以上に衝撃的な光景が映った。

そこには明らかに兵士ではない人が佇んでいて、目を疑ったその時だった。

私は左足を鉛玉で貫かれた。


私はその場で倒れ、かろうじて死体の影に隠れた。

ぼやけてく視界の中、そのひとに目を移すと、

服に泥は一切付いておらず、銃弾が飛び交い爆弾が爆発する中、

そのひとには当たることはなかった。


そして、そのひとは優しく微笑んでいた。

その顔が脳に焼き付く。

そして私は気を失った。


次に私が目を覚ましたのは、テント内のベッドだった」


「ここはどこだ、俺は生きてるのか」


混乱する中、あの微笑みが頭に浮かぶ。


「そうか、俺はあの時気を失って……」


状況を理解し、冷静になって考えた。

あのひとは何だったのだろう。

あの微笑みは一体……。


そして私は引退し、今に至る。


「そう言えば今まで、そのひとがどんなひとだったか聞いてなかった」

「そのひとは背丈が165cmほどで、歳は私と同じくらいか少し下。

とても中性的で神秘的で、直感で人間ではない、神か天使か何かだと感じた」

「へぇー本当にいたの?幻じゃなくて?」

「本当だよ、今でも脳に焼き付いてる」

「じゃあ、僕も見れたら良いな。見れたらその微笑みの意味、土産話として話してあげるよ」

「そうだな」


二人はディナーを食べ終えた。


「はぁー美味しかった、また食べられるといいな」

「馬鹿なこと言うな、いつだって食べさせてやる」


ジャックは少し安心したように照れる。

その後二人は寝支度を済ませ、眠りにつく。





翌日、ジャックを見送るため外に出る。


「本当に大きくなったな。今いくつあるんだ?」

「183だよ」

「そんなにあるのか!いつの間に父さんよりデカくなって」


「ジャック、お前は私の誇りだ。

無事に帰ってきなさい。

お父さんは待ってるから。

絶対にミートローフ作って待ってるから」


二人は涙を浮かべながら微笑む。


「じゃあ、お父さん行ってくるよ」

「行ってらっしゃい」


と、優しく言う。


ジャックは決して振り返らなかった。

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