第3話

 なんて話は今はどうでも良くて、ガラス戸を乗り越えて近付いた海は、間違いようがなく死んでいた。

 だってどう見ても首が折れているし、蜜柑が咥えた棒でつついても反応がないし、頭蓋骨からは血だけでなくゼラチン質の脳漿までもが溢れている。わたしは衝撃を覚えている。つい寝る前まで仲良く楽しくお喋りしていた相手が、グロテスクな肉塊と化し二度と立ち上がっては来ないのだという事実を、わたしはどうにも直視出来る気がしなかった。

 わたしは居住区の屋上を見上げた。屋上は解放されておりフェンスの類もなかった。海はあそこまで行って落ちて来たのだろうとわたしは考えた。

 「マジで死んでるの?」とわたし。

 「どう見ても死んでるよぅ」と蜜柑。

 「ふつうに明日になったら一緒に朝ごはん食べて授業受けんじゃない? って気がするんだけど」

 「そうだったら良いのにねぇ」他人事のように聞こえる声だった。

 「……わたしが生き返した方が良いのかな?」

 「えーっ。ダメだよぅ」蜜柑は焦った様子だった。「勝手に魔法使ったら怒られるだけじゃ済まないよ? だいたいさ空ちゃんの魔法ってタダじゃないどころかさ」

 「それはそうなんだけどね」わたしは首を振るった。

 その時、居住棟の廊下を歩いて来る足音が聞こえて来た。

 「きゃあっ」大人が来ると思ったのだろう。蜜柑が怯えた様子でその場に隠れようとしゃがみこんだ。「空ちゃんも早くっ」

 蜜柑はわたしの服の裾に噛み付いてわたしを窓の真下に引っ張り込もうとした。しかし顎の力が弱かった為か、わたしを引っ張ることが出来ずに裾から口が外れ、そのまま居住棟の壁に頭を強打した。

 「いったぁっ!」

 わたしはその間抜けな挙動を冷めた目で見送ってから、廊下を歩いて窓辺にやって来た二人組に視線をやった。

 「キリンにパンダ」とわたし。

 「さっきのはいったい何の音よ」パンダは眉を潜めた「あんたらこんな夜中に何を遊んでるの?」

 「夜更かししてるんならキリンさんも混ぜてくださいよー」キリンはにこやかな表情だった。「お昼寝し過ぎて眠れないんですよー。パンダを起こしても全然遊んでくれないんです」

 動物の名前が付けられた二人はこの区域における現在の最年長コンビであり、寝室を共にする十七歳同士だった。

 パンダはわたし達とは人種が違うかなんかで褐色肌をしていて、堀の深い顔立ちとやけに通った鼻筋を持った少女だった。多分アラブ系かなんかだが、部分的には東洋人っぽさもあるので混血かもしれない、と本人は言ってる。首の後ろにくくった髪が鞭のように長く伸びていて、背が本当に高く百八十に迫るくらいでスレンダーな身体つきをしている。

 キリンは眠たげな垂れ目とくっきりした二重瞼を持った女の子で、丸っこい小さな顔の持ち主で、髪の色素が若干薄くそれを肩下までのボブにしている。背は高くも低くもないが最年長の割には幼く可愛らしい顔立ち。施設で出会った中で一番綺麗な女の子は蜜柑だけれど、二番目は多分葡萄かキリンのどちらかだろう。

 「遊んでるんじゃないんだってば……」わたしは息を吐いて足元を指さした。「これ見て」

 「う……うわぁああああ!」キリンはあからさまに動揺して喚き始めた。「人が死んでるぅううううう! あああああああ! ひいぃいい!」

 「うるさい!」パンダが冷静にキリンの頭を叩いて黙らせようとした。「大人来るでしょ!」

 「でもでもでもだだだだだだだだだってだって人が人が死んでるるるるるるる!」キリンはアタマを叩かれても驚異的な粘りでしつこく喚き続けた。「さしものキリンさんもこんなのは初体験で……。うわぁあああああひぃいいいうきゃああああああ。ひぃいいああああああ! あ」

 突如としてキリンは停止ボタンを押したかのようにピタリと動きを止めた。

 「え? 何?」とパンダ。

 「キリンさん、気付いちゃいましたよ」キリンはにっこり笑って胸を張った。

 「いったい何なの……」キリンの挙動に蜜柑ですら目を丸くしている。

 「これほどの緊急事態です。さしものキリンさんも、ほんの僅かに若干ながら取り乱したことは認めなければなりません」キリンは窓枠を乗り越えて海の死体に歩み寄った。「しかしすぐに平静を取り戻すのもキリンさんです。クールに死体を観察することで、ある重要な事実に気が付いたのです

 キリンは海の死体から左手を持ち上げた。

 「これです」

 そこにはあるはずの小指がなかった。

 「きゃあっ」蜜柑が短い悲鳴をあげた。「し、死体なんて触ったら汚いよっ」

 「言ってる場合じゃないだろっ」わたしは苛立った。

 「これは海の死の謎を解き明かす上で重要な手がかりとなります」キリンは海の死体の周りを格好付けた足取りでぐるぐる回った。「蜜柑。そして空。あなた達がこの死体を発見した経緯を話してください。このキリンさんが推理をして差し上げましょう」

 「そんなことより部屋に戻るか、大人達に正直に事情を話してこれを見せた方が良いんじゃない?」パンダは冷静な意見をした。

 「えー……」キリンはとても残念そうな顔をした。「キリンさん、こういう推理小説的な展開には憧れがあるというのに……」

 「知らないわよ。さあ、年下のあんた達は戻ってなさい。出歩いてたのは私達だけってことにしてあげるから」パンダはわたしと蜜柑にキビキビと指示を出した。こいつは今この区域ではリーダー格で、こうして人に命令するのは様になり頼もしさも感じる「で、私とキリンで宿直の大人に報告を……」

 「待ってくださいよぅ」キリンはパンダになすり付きながら懇願した。

 「やめろ暑苦しい!」パンダはキリンを遠ざけようとした。

 「名探偵になる一世一代のチャンスなんですよ。報告するのは良いですけど、せめてその前に話だけでも訊かせてくださいよ」

 「……分かった。話すね」見かねた蜜柑が口を挟んだ。「あのねぇ……」

 蜜柑がたどたどしく説明するのを、キリンが格好付けて「ふむ、ふむ」と相槌を打つ時間が流れた。そしてキリンが言った。

 「…………謎は全てこのキリンさんが解きました」

 「どうだか」パンダが肩を竦めた。

 「推理を証明する為には……ある人物に協力を依頼しなければなりません」

 「誰よそれ」面倒見の良いパンダはキリンに相槌を打ってやっている。

 「彗星です。部屋に行きましょう」

 気が付けばキリンが場のイニシアチブを握っていた。わたし達は恒星と彗星の十二歳コンビのいる部屋を尋ねた。

 「すいせーい! 起きてますか?」ドタバタと足音を立てながら部屋に入るキリン。

 「ボクは寝てるんだけど!」叩き起こされた恒星が抗議の声を上げた。彗星の同室の少女だった。

 「おや彗星はいませんね」キリンは彗星の布団を捲った。「しょうがないですね。心当たりがありますので、そっちに行きましょう」

 キリンは十二歳コンビの部屋を出た。部屋の向こうから恒星の抗議の声が放たれたが、キリンには聞こえていないようだった。

 キリンを先頭に廊下を歩く。そこでキリンは「あ、そうだ」と唐突に言うと「ちょっと見せてください」と突然わたしの両手を握って観察し始めた。

 「えっ? ちょっと……何……」

 「やはり血痕が付いてますね」

 「いやそれは海の死体触ったからじゃない?」

 「空ちゃん触ったっけ?」と蜜柑。「あたしは咥えた枝でつついたりしたけど、空ちゃんは触ってないはずじゃ……」

 「いや触ったんじゃないの? でなきゃ血が付いてる説明付かないもん。つうか」わたしは白い目で蜜柑を見た。「そういやあんた、どさくさで海の遺体枝でつついたりしてたよね? あれ酷くない? 流石に不謹慎でしょ?」

 「ご……ごめんなさい。生きてるか確認したくて……でも死体を口や顎で触るのは流石に嫌だし、何でも脚でするなって皆良く怒るから、しょうがなく枝で……」

 「まあ、あんたの場合色々しょうがないのかもしれないけどさ。でも腕ないなりに仏には出来る限り配慮して欲しかったっていうか……。肩に五センチくらい突起残ってるんだから、それを使えば良かったんじゃないの?」

 「直接触るの全般嫌だったから……」蜜柑は媚びた表情を浮かべた。

 「なら条件わたし達と一緒じゃん! そういうとこだよあんた? 分かってんの?」

 わたしが怒鳴ると蜜柑は微かに目に涙を貯める。「ごめん、ごめんね……」

 「今喧嘩してる場合じゃないでしょ」パンダが溜息がちに窘めた。

 「何さ。普段全然蜜柑の介助手伝わない癖に」

 「今喧嘩してる場合じゃないと言ってるの。誰が介助してるとか関係ない」

 「あんたねぇ……」

 「そうだ!」そこでキリンがでかい声を出してその場の全員の関心を奪った。「空と海の部屋も調べてみましょう。何せ被害者の寝室です。きっと何かあるに違いありません!」

 そして誰の了承を得ずして、近くにあったわたし達の寝室に勝手に押しかけて行く。わたし達が追いついたころには、キリンは床に四つん這いになってわたしと海の寝室を這い回っていた。

 「見つけましたよ!」

 キリンは四つん這いになって指を立ててその一点を示していた。暗いので良く見えなかったが、キリンに促されて指を触れてみると、確かに雫のようなものが垂れていて嫌な感じに濡れていた。

 そして一度一つの血痕を認識してみると、小さな血痕がぽつぽつと落ちているのが、月明りの中で浮かび上がるように感じられた。

 「何でこの部屋に血痕が……」わたしは声を震わせる。

 「おかしなことではありませんよ。海は小指を切り落とされていたんですから、そりゃあ血痕も垂れることでしょう。もっとも指を切ったのがこの部屋というのは予想外でしたが……」

 驚くことにその血痕のいくつかはわたしの布団を汚していた。指が切られたのがそこであるようにまでは思えなかったが、一時的に切られた指が転がっていたという可能性ならありそうな血痕の量だった。

 「海の布団は全く汚れていないのに対し、空の布団は汚れてますね」

 「布団の中に、指があったりして……」蜜柑が身震いした。「もしそうだったら、空ちゃんもうこのお布団じゃ眠れないよ……。あの、空ちゃん、良かったらあたしのと変えたげようか?」

 「良いよそんなの……」わたしはアタマに手をやった。部屋が暗いからと言って、わたしはこんな血痕に気付かなかったのか。

 「キリンさんの推理に寄れば、指が見付かる可能性はどこにもありませんよ」キリンは断言した。「では改めて彗星を捜しに行きましょう。心当たりはありますから」

 キリンの心当たりは食堂だった。隣接するキッチンルームに入ると、キリンが大きめのゴミ箱を一つどかすと、裏にゴキブリのように隠れていた背の低い女が現れた。

 「は……はうわっ」彗星は手に持ったコッペパンをかじりながら身を震わせた。「違うんです違うんです! あたしはつまみ食いをしていたんじゃないんですよ! ただ残飯を漁っていただけで……ってキリンさん?」

 「キリンさんですよ」キリンはにっこり笑った。「何一人で食べてるんですかぁ。キリンさんにも分けてくださいよー」

 「えーダメだよーこれはあたしが見付けたんだよー」彗星はにこやかに笑いながら立ち上がり、コッペパンをキリンの方に差し出した。「でもキリンさんになら一口あげるのじゃー」

 「わーい!」キリンは口を限界まで開けてコッペパンにかじりついた。「おいしい」

 「あっ。ちょっとこらキリンさん。なんでそんないっぱい食べるの?」

 「えー? だって、一口は一口だし……」

 「こんなにいっぱいの一口なんてないよキリンさん。返してよ返してよ!」

 「ご、ごめんなさい彗星。どうせならたくさん食べなきゃ損だと思ってしまって……」

 「これは詫び案件だよ! どう責任取ってくれんのっ」

 「じゃ、じゃあ明日の朝のデザートのバナナ、あれ半分譲りますよ。それで許してください」

 「え? 本当?」彗星は目を輝かせた。そしてすぐに機嫌を直してキリンに抱き着いた。「わーい。だからキリンさんって好きー!」

 「やっとる場合か!」パンダが吠えた。

 彗星は今の区域でもっとも生年月日の若い十二歳の女の子で、背が低く百四十センチそこそこしかない。その割にはおっぱいが施設の中で一番でかいというアンバランスな体格をしている。頻繁に残飯を漁りに食堂を訪れるくらい食い意地が張っている為、その栄養が胸に回っているのかもしれない。髪型はセミロングで若干のボリュームがあった。

 「なんで彗星がここにいるって分かったの?」とわたし。

 「朝食でコッペパンが一つ余ったので。そういう時彗星は夜な夜なそれを食べようとキッチンに忍び込みます」とキリン。「キリンさん、たまに一緒にと誘われるんです」

 「なるほど。でもどうして彗星が必要なの?」

 「必要なのは彼女の魔法です」キリンは改まった口調で言った。「彗星。空の口にちゅうをしてもらえますか?」

 「えーっ。やだよ気色悪いよ」彗星は不安を訴えた。「だいたい大人の指示もないのに魔法使ったら怒らえるよー」

 「そこを何とか、お願いできませんかね……」

 「乙女の唇は安くないのじゃ。いくらキリンさんの言うことでもそれは聞けないよ」

 「残り半分のバナナもあげますから……」

 「えーっ。良いの? じゃあ、やるーっ」彗星は満面の笑みを浮かべた。「だからキリンさんって好きーっ」

 彗星はわたしの方を見ると笑顔のまま唇を近付けて来た。接吻するつもりのようだ。

 いやこいつはバナナ一本貰ってるけどわたしの承諾はなしか? 緊急事態だし必要ならしょうがないかもしれないけれど、せめて訳を聞かせてからにして欲しい。普通にキショい。

 「彗星の魔法って、キスした相手の寿命を知ることよね?」とパンダ。

 「そうじゃよ」彗星は頷く。

 「空の寿命がどう関係するのさ?」

 「それはしてからキリンさんがお話します」キリンが言う。「さあ、濃厚な奴を頼みます!」

 「らじゃーなのだ!」

 彗星の濃密なキッスがわたしの唇に押し当てられた。マジで濃密にしなくて良いのにと思ったが、そうでないとちゃんと寿命を読み取れないと過去に彗星が語っていたのを思い出した。流石に舌は入れて来なかったが柔い唇がまるまる三秒くらい押し当てられる。

 ようやくことが終わると、彗星は無邪気な笑顔でハキハキと口にした。

 「あと五十五年と三日。今十三歳だから六十八歳で死ぬのじゃ」

 「言うなって!」わたしは割と本気でキレた。

 「ごめんなのじゃ。でもキリンさんが教えてっていうから」

 「わたしの前で言うことないでしょ! キリンの耳元ででもささやいておけよ! どうするんだよ! 知りたくなかったよ自分の寿命なんて!」

 「忘れさせてもらえば良いんじゃないかな?」蜜柑が言った。「ほら、誰か人の記憶を消去できる魔法の子がいたはずでしょう? 指先から忘れるビームみたいなのがビーって出て、当たったら過去一時間の記憶がなくなるって奴」

 「それが海なんだよぉおおお!」わたしは九割がた八つ当たりの怒声を蜜柑に放った「もっと他人に興味持てよ! 魔法なんてその人のアイデンティティなんだからちゃんと覚えとけって! 生まれた時から同じ施設で生きてるのに何なんだよあんたは!」

 「ご、ごめん……」蜜柑はべそをかいて俯いた。「反省するから……反省するからぁ……」

 「蜜柑は他人に興味ないと思うけど怒鳴るのは理不尽なのじゃ。ねぇ、この二人って本当に仲良いの?」彗星が小首を傾げた。

 「力関係がちょっとはっきりし過ぎてるけど、まあ仲は良いんじゃない?」とパンダ。「空も空で捻くれてて気難しくて、シャイで人と壁作る上意味もなく苛々して噛み付く性質だから、他に友達少ないじゃない? で、蜜柑はこの通りだし、だから余り者同士……っていうと聞こえは悪いけど、まあお似合いっていうか」

 「なるほどなのじゃ」

 「失礼だろ!」わたしはパンダを睨んだ。

 「そ、空ちゃんは優しいから……優しいからあたしの相手してくれてるだけだから……」蜜柑は目を赤くしたまま震えた声で言った。「あたしと違って空ちゃん他にも友達いるし……。恒星ちゃんとか海ちゃんとかとも割と話すし……。別に嫌われてる訳じゃ……」

 「別に嫌われてるとまでは言ってないわよ」パンダは肩を竦めた。「歳が離れてるからあんまりつるまないけど、根は悪い子ではないと思うしね」

 「うんうん。人の嫌がることを引き受ける姿は感心なのじゃ」彗星はにっこり笑う。

 「その人の嫌がることって言い方はやめない?」わたしは彗星を睨む。

 「わー怖い」彗星はニコニコした顔でそれを受け流す。飄々とした奴なのだ。

 「それで彗星。確か、去年の今頃大人に言われて空の寿命を調べてたことありましたよね? あの時は何年でした?」キリンは尋ねる。

 「五十六年じゃよ?」彗星は答える。

 「えぇ……それおかしくないですか?」キリンは弱った表情を浮かべる。

 「何が? 一年前五十六年で今五十五年なら普通なのじゃ」

 「そうじゃなくて、あの。空の魔法のコストって五年刻みですよね?」

 「……まあそうだけど」わたしは頷いた。

 「キリンさんの推理との整合性は……?」キリンはその場で表情を真っ白にし始めた。「そんな……そんな……」

 キリンはしばし呆然とすると、少しずつ身を震わせ始める。徐々に徐々に振動の幅が大きくなって行き、次第に悲鳴をあげながらガタガタ震え始めた。

 「うわぁあああああ! 推理を外してしまいましたよぉおおおお! せっかくたくさん格好付けたのにぃいいい! うわぁああああああああ!」

 「わ。キリンさんが、こういう風になっちゃった」震えながら悲鳴をあげるキリンに彗星が言う。「キリンさんはこういう時、良くこういう風になるからね。というか皆揃っていったい何があったの?」

 「あ……えっと。うん。実は海ちゃんが高いところから落ちちゃって……」おずおずと蜜柑が言う。

 「な、なんだってー」彗星が目を丸くした。「海が死んだだなんて。う、うわー」

 「うわぁあああああああああああ!」キリンがでかい声で彗星の驚きに割り込んだ。「あんなに格好付けたのに恥ずかしいですよぉおおお! うわぁあああああああああ!」 

 「ちょっと待って!」わたしは口を挟んだ。「今の、なんか変じゃなかった?」

 「何が変なのじゃ?」彗星が言った。

 「いやだって……」

 「うわぁあああああああああああ!」キリンは喚き続けている。「これ絶対内心バカにされてる奴ですよおおおお! うわぁあああああ!」

 「うるさい!」パンダが声を荒げた。「驚いたり慌てたり恥ずかしがったり全部口に出す癖はやめてちょうだい! 結局全部無駄だったんじゃないのよ! もういい! あんたらもう皆部屋に戻りなさい! 私が一人で宿直の大人に報告しに行くから」

 「でもそれだとパンダさんだけが怒られちゃわない?」と彗星。

 「どうせ誰か怒られるなら私一人で十分よ。ほら、行った行った」

 そういうパンダに促され、わたし達はそれぞれ自分の部屋に戻って行った。

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