弱さへの執着
白川津 中々
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男は己の弱さに依存していた。
意思薄弱で、争いを恐れて他者との関係を避ける彼は社会的責務を放棄し、夜な夜な泣き声と自己否定に縋り心を満たしている。稼いだ日銭は隙間風の入る部屋の家賃にあてられ、手元にはほとんど残らない。狭く粗末な間取りであったが床に籠って過ごす男にはあり余る広さである。しんと静まり返る暗闇の中ではか細い吐息とともにしくしくと弱々しい涙の音が響く。彼はいつも、事あるごとに「どうして」と呟く癖があった。何に対しての疑問なのかは語られる事はない。あるいは、男を形容する言葉がそれであり、自身の惰弱を言い聞かせているのかもしれない。何も持たない、持ち得ない男は、自身の弱さばかりを拠り所にしている。殊更に繰り返される言葉は、その象徴なのだろう。
男は今年四十三となる。十分に人生を、歳を重ねている。何かをするには遅すぎるし、終わらせるには早すぎる。ただ、その時が来るまで、男は弱い自分に執着するしかないのであった。
弱さへの執着 白川津 中々 @taka1212384
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