ルシエラ、ルシエラ-2

 ミレリア様は400年!?以上前に、とある夫婦の赤ん坊を取り上げた。その夫婦は感謝して、ミレリア様に赤ん坊の名付け親になって頂くようお願いした。そこでミレリア様は、その赤ん坊に「ルシエラ」という、かつての恩人の名前をお付けになった。

 その一家はそれに感激して、それ以来、女の子が生まれると、代々、ルシエラと名付けるようになった。


 これだけならハンカチ必須の、超ハートフルストーリー。問題はこれが400年前の話ということ。つまりこの時代には、沢山のルシエラさんがいる。だから「ルシエラはどのルシエラ?」というワケ。

 流石に同じ街でのルシエラ被りは、ご両親が避けるのだが、引っ越したり嫁いだりした先の違う町には、普通にルシエラさんがいる。

 手元の紙にルシエラさんの家系図を書いてみたけど、なんか凄いことになってしまった。


「大切なお名前なので、代々継承されているんですね」

 と言うと、ミレリア様の顔が一種だけ暗くなった。すぐに笑顔になると、

「そういうことね」と呟く。


 ん~何かまずいことを言ったかな?もしかして「継承」って使ったらまずいのかな?


 キャシーはちょっと心配そうな顔をする。


 ルシエラ問題は数だけの問題ではなくて、プレゼントをどう選ぶのかも問題らしい。なにせミレリア様から賜ったプレゼントである。先祖代々大切にされるのだが、代をまたいで再度プレゼントをするときに、同じものを渡してしまうと、代を重ねて被ってしまうのだ。家宝として壺ばかり並んでも迷惑だろうから、といってちゃんと送った物を把握されているらしい。何という気遣いの鬼。


「いやー、大変ですね」

 と思わず言ってしまった。

 ミレリア様は笑いながら、「そうね。でもね……」と言って続ける。

「でも嬉しいのよね。それだけ沢山のルシエラが増えているという事は、帝国が発展して平和という事だから。私の取り上げた赤ん坊が、今のこの時代になっても「継承」されているという事だから」

 そういって、少し済まなそうに、笑う。

 ホンマ、なんていいお人や。


「じゃあ、私はそろそろ行くわね。お仕事がんばってね。期待しているわ!」


 そういってミレリア様は席をお立ちになると、建物の出口に向かっていった。

 何百年も生きると色々大変なんだなーと、思いつつ、何百年生きてもあんな風になれる自信はないなー、とも思ったりする。

 あ、そうだ。サインを貰わなきゃ。

 そう思って色紙を見ると、あーしまった。全部、ルシエラさんの家系図で埋まってるわ。

 どーしよ、ミレリア様まって下さ……いや、先に色紙を……うわー!


 キャシーは頭を抱えて困ってしまった。

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