禁忌-2

 ある日、帝国内で反魂の研究を行っている者が居る、という情報が入ってきた。帝国内では禁忌であるため、違法行為である。

 行っているのは獣人であるらしい、ということで、獣人のオスカーにミレリアが帯同する形で、一緒に研究施設へやって来ることになった。


 オスカーは、どういった研究課程となるだろうかは、おおよその察しは付いていた。それゆえに、ミレリアもそれを見れば考えを変えるのではないか?そう思って、ミレリアも連れてきたのだ。

 オスカーはそれを後悔した。察しが間違っていたからではない。それよりも、凄惨な光景が広がっていたからだ。


「生命力を魔力に変換する、その逆をすれば、自身も不死になれるのでは?」


 その時の生命力の変換元となる者は、誰が適切だろうか?単純に、魔力の高い者が最も適切であろう。さらに言えば、出来れば御しやすい者が良い。

 その研究施設に転がるように放置されていたのは、ミレリアと同じ、人魚の死体だった。「力のない不死など惨め」と言うミレリアの考えを、まさに証明するかのような光景。

 オスカーは、ミレリアの顔を見ることが出来なかった。普段の彼女からは感じることが出来ない、凄まじい殺気を含む、魔力の波動を感じたからだ。

 ミレリアには、400年前に、一晩中慰み者にされたことがあるという記憶がある。目の前の光景は、その時の屈辱を、フラッシュバックさせるのに十分だった。


 彼らの目の前には、この研究を行ってた、獣人の男が居る。捕まった彼は、下卑た笑いをしながら言う。

「だってズルいじゃないですか。ミレリア様が不死なのに、俺たちはそうでないなんて……」

 オスカーは、目の前の男の口を塞いでやりたかった。お前は、状況を分かっているのか?と。お前と同族である自分が、今、どれほどの恐怖と嫌悪に襲われているのか、分からないのか?と。


 突如として、男は水隗に呑まれた。ミレリアの水隗だ。口は塞がれていない。窒息などという、生易しい終わり方には、ならなかった。


 オスカーは、恐怖で震えながら、目の前で起きた惨状の終わりを見つめていた。そちらを見つめているほうが、まだマシだったからだ。

 男から他の協力者を聞き出したミレリアは、高い靴音を立てながら、部屋から出て行った。その協力者たちも、目の前の彼と同じ道を辿るのだろう。


 オスカーは思い出した。ミレリアの100年前の二つ名を。


「冥府の女王」


 ミレリアは魔術研究の部分的な公開に同意した。それと共に、自らも、禁忌を含む、魔術関連の管理、取締りにも参加するようになる。

 皆が、それに従った。皆、女王の裁きを恐れたのだ。

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