冥府の女王-2

 ミレリアは帝都の宮殿に300年以上住んでいる不死の人魚だ。寵姫として宮殿に上がり、代々の皇帝に「継承」されてきた。その屈辱を胸に長らく雌伏してきた彼女だが、寿命を武器に人間関係を築き、とうとう宮廷内の闘争を制した。

 宮中に張り巡らされた人間関係を「糸」と呼ぶミレリアは、すでに誰を皇帝に選出するかにすら影響力を行使できる立場にある。だが、そんな彼女でもいまだに影響力が及ばぬ場所もあった。


「帝国軍」

 帝国の力の根源にして、ミレリアの「糸」すら届かぬ男たちの聖域

 

 彼女にはそれが不服だった。

 そんなミレリアが可能性を見出していたのが魔法だった。一般的には曲芸ぐらいにしか使えないと言われる魔法だが、ミレリアはこれが実用に耐えうるだけの力を持ち得ると考えている。これが実になれば、あの聖域に切り込めるかもしれない。ミレリアは国庫を魔法研究に次ぎこんだ。

 しかしそれが「役に立たないことに予算を湯水のごとく注ぎ込んでいる」として、予算をめぐる軍の反感を呼ぶ。ミレリアと軍の関係は日増しに悪化していった。


「私の暗殺計画だと!?」

 流石のミレリアも、思わず執事であるラスタバンに聞き返した。

「はい、次の宮中の講演会場で、講演中のミレリア様を襲う計画の情報が手に入りました」

 どうやらミレリアの「糸」に情報が引っ掛かったらしい。

「わざわざ講演中を狙ってくるのか。随分と派手なことを考えるな……」

 暗殺自体が目的なら、もっといい場所があるはずだ。講演を駄目にすることそのものが目的なのかもしれない。そもそも暗殺対象に暗殺計画がこうもあっさりと漏れていることが妙でもある。

「殺されたくないなら余計な事をするな……とでも?」

 ミレリアが呟く。

「そうかもしれません。どちらにせよ次の講演は中止にされた方が良いかと」

 ラスタバンは万一を考えて、当然取るべき提案をした。

 ミレリアは少し考えてから言った。

「いや、私に考えがある」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る