紀元300年
冥府の女王-1
ハーイ、僕の名前はミカエル。フリーの魔法研究者さ。よろしくね!
では、今日紹介するのはこちら、魔力増幅リングー!!!みんなは魔法を使っているかな?あんまり役に立たないから使ってないかもね。
でもこちらの商品、これを腕に嵌めればなんと……魔力が増幅してもっと魔法が便利に使えちゃうんだ。
例えば何もつけていない状態で水の魔法を使うと……こうミカンぐらいの大きさの水玉しかでないよね!
でもこれを付けてちょっと全速で走るくらい頑張っちゃうと、フゥフゥ。ほら、リンゴほどもある水玉で出ちゃった。
フフフ、すごいでしょ!でもこれはまだまだ試作品。もっと資金があれば、もっとすごいのができちゃうかもー。
もしも興味がったあったらこちら、ミ・カ・エ・ルに、御投資を~!……よし!完璧!
事前練習を終えたミカエルは思いっきり背伸びをした。今日はこれから帝都のお偉いさまに資金提供をお願いするためのプレゼンテーションを行う。今まで何度やってもうまくいかなかったミカエルは、今日こそはとばかりに念入りに準備をしていた。
ドアを叩く音がする。「ハィー、ドウゾー」ミカエルの返事が緊張でうわずる。ドアを開ける執事の奥から今回の出資者候補である女性が入ってきた。
高い身長に長い脚。厚手の豪華な服の上からでもわかるプロポーション。巻き上げられた長い髪の毛は頭上で漆黒の大輪の花を咲かせている。
少しだけ吊り上がった切れ目の長いアーモンド形の目が冷たく見下ろし、口はどこか不機嫌そうに結ばれている。
凄まじい美人なのだが、それだけに圧が凄い。
「ミレリア様ですね。今回はご訪問頂きありがとうございます。えーとですね、ハーイ僕の名前は……」
練習の通りに始めようとしたミカエルに、興味はないと言わんばかりにつかつかと歩み寄ったミレリアは、ミカエルの持っていた魔力増幅リングをひったくった。
「これが聞いていたモノだな。試させてもらうぞ」
ミレリアは腕にリングを付けると、ミカエルと同じように魔法で水球を作り始めた。
(お、終わった)
目を閉じたミカエルは内心で思った。今までの出資者候補には漏れなく「なんの役にも立たない」と言われて失敗してきたのだ。
だから今回はプレゼンテーションの準備までして用意してきたのに、それも使えないなんて……
次はどうしよう、と思いつつ目を開いたとき、ミカエルは信じられないものを見た。
部屋を覆わんばかりの巨大な水球。
(え、何これ。こんなの見たことないんだけど)
唖然として表情が固まったミカエルに対し、ミレリアは関心したようにリングを見つめて言った。
「ほう、試作でこれか。これは素晴らしいな。魔力変換に必要なロスがまだまだ大きいが……気に入った」
水球を戻してリングを外すと、ミレリアは執事を呼んで、用意されていた書類にサインを入れ始めた。
「資金ならいくらでも用意しよう。必要なものがあれば取りそろえる。何かあったら連絡するように」
必要なことを必要なだけ伝えると、用は終わったとばかりにミレリアはドアに向かった。
執事がドアを閉める直前に、顔半分だけ振り返ったミレリアが言う。
「今までの連中は口先だけで大したことはなかっが、お前は違うようだな。見どころがある。結果を出せ!期待しているぞ!」
ドアが閉まってしばらくしてから、ミカエルは無言のガッツポーズを決めた。
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