ミレリアの糸-3

 宮廷内の一角にてミレリアは目前の男を見下ろした。男は新皇帝レギオロス。たいそうな名前の割には優柔不断、それゆえに無難、という理由で担ぎ上げられたレボルトとは真逆の小物。

「それでは例の件について、お願いいたしますね」

 ミレリアは何度も念をいれる。ミレリアの魔法研究に必要な予算、その捻出のために他の予算を削減してでも融通するという約束を、選挙の最初から取り付けていたのだ。

「分かりました」

 男は一言だけ述べた。少しだけミレリアの肢体をもの欲しそうに眺めていたが、ミレリアが目で一喝すると、そさくさとその場を離れていった。


「ミレリアの糸」は極めて多次元的な複雑なものであり、均一の広がりで構成されたものではない。レボルトはミレリアの票の総数こそ把握していたが、ミレリアがどれほど細やかに票を操作できるのかまでは知らなかった。彼女にとって過半数を割って選挙の回数を操作する、などということはなんの造作もないことであったのだ。


 ミレリアはもはや自分以外だれも訪れることない寝室に戻る。……もはや我慢できなかった。






「ウハハハハハハハハハハハハハハハハッハハハハハハハハッハハハハハハハハハハハハハハハハハッハ!!!!!!!!どうだ!思い知ったか!!!!私の力を!!!!」

 ミレリアは誰もいない寝室で声高に笑う。


 私は勝った!!!!勝ったのだ!!!!!!どうだ!!!私は勝ったぞ!!!ただ私の力のみで!!!!

 高々数十年生きているだけの小僧どもが、思い上がりもにも甚だしい!!!


 ミレリアは止まらない。


 まだだ、まだ足りない。私は今まで奪われ続けてきたのだ!私にはもっと、もっと奪う権利があるはずだ!


 ミレリアの権力欲は、まるで獣が獲物を求めるがごとく加速していく。ミレリアの憤怒は噴火した火山のように煮えたぎっていた……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る