第10話 突如の危機
朝の光が街を染める中、
アイラは宿の窓辺で身支度を整えていた。
長剣を背中に背負い、
探索者カードを手に取る。
昨日の協力戦で、
ライバルのライラと息を合わせ、
大型ゴブリンを倒したことが胸に残る。
「……今日も頑張ろう」
胸元の配信端末を確認すると、
視聴者は百人を超えていた。
数字は小さく見えるが、
自分を見守る人がいるという確かな証だ。
街を歩きながら、
アイラは今日のダンジョンを思い描く。
掲示板には中規模ダンジョンの依頼。
危険度は中だが、
報酬は昨日より高め。
カードを提出し、
許可を受けると、通行証を手にした。
地下への階段。
薄暗い通路が、口を開けて待っている。
壁には淡く光る結晶。
床は湿っており、踏むたびに水滴が跳ねる。
配信を開始する。
「こんにちは、探索者のアイラです」
視聴者は昨日より増え、
百二十人。
「見てくれてありがとうございます」
通路を進むと、
小型の魔物が次々現れた。
スライムとゴブリンの混合型。
素早く、攻撃パターンも複雑だ。
「……焦らずに」
一歩下がり、距離を取りながら観察。
隙を見て斬撃を入れる。
――コメント:
「上手くなった!」
――コメント:
「見応えある」
胸の奥が温かくなる。
誰かが見ている。
自分の行動が伝わっている。
進むと、通路は分岐していた。
右は狭く、暗い。
左は広く、明るい。
「……どっちに行こう」
配信画面に向かって説明する。
「右は危険ですが、魔物は少なめです。
左は戦いやすいですが、数が多くなります」
――コメント:
「左がいい!」
――コメント:
「右は避けろ」
「じゃあ、左にします」
剣を握り直し、慎重に一歩踏み出す。
広い通路には、ゴブリン三体。
一体は盾、二体は棍棒。
「……やっぱり強い」
間合いを取り、突進を受け流す。
横から斬りつけ、一体ずつ倒す。
――コメント:
「焦らないで!」
――コメント:
「判断いいね」
奥に進むと、影が揺れる。
大型のゴブリン。
牙と爪が光り、攻撃は遅いが一撃が重い。
「……やっぱり来た」
剣を握り直し、距離を取る。
一撃を受け流し、次の隙を狙う。
――コメント:
「強そう!」
――コメント:
「頑張れ!」
斬撃を決め、大型ゴブリンを倒す。
視聴者は百五十人に増え、
コメントが流れ続ける。
だが、出口に向かう途中、
不意に通路の壁が揺れた。
「……?」
空気が重くなる。
小型ゴブリンの群れが、
これまでにない速度で襲いかかる。
「わっ……!」
剣を握り、連続で斬る。
次々と襲いかかる魔物に、
避けながら応戦する。
――コメント:
「大丈夫!?」「気をつけて!」
視聴者が声を届けてくれる。
心が少し温かくなるが、
同時に緊張が走る。
ゴブリンの群れをかき分け、
距離を取る。
だが、数が多く、押され気味だ。
「……無理はしない!」
端末を通して、
視聴者に語りかける。
「みんな、心配かけてごめん。
でも、大丈夫です」
小さな声が、
画面を通して伝わる。
群れの中心から、
一体の大型ゴブリンが現れた。
これまで見たことのない大きさだ。
「……これは……!」
剣を握る手に力が入る。
戦闘の判断を誤れば、
一撃で致命傷を受けるかもしれない。
大型ゴブリンが振りかぶる。
アイラは横に跳び、
剣を振るって隙を突く。
――コメント:
「危ない!」
――コメント:
「応援してる!」
連続斬撃で倒すが、
息は荒い。
腕が重く、汗が額を伝う。
ダンジョンを抜け、
街に戻る頃には、
視聴者は二百人を超えていた。
「……ふう、
無事だった」
端末を置き、
息を整える。
一方、ギルド長室。
男は配信画面を見つめ、
静かに呟く。
「……あの群れは異常だ」
視聴者数の急増、
群れの襲撃、
娘の戦い方。
すべてが、
これからの試練を予感させる。
だが、遠くで守る父として、
心配と誇りが入り混じる。
こうして、
小さな剣士アイラの冒険は、
初めての危機を経験し、
視聴者との絆とともに
新たな物語の幕を開けた。
魔王の娘、ダンジョン配信はじめました。 塩塚 和人 @shiotsuka_kazuto123
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