第6話(最終回) 俺、幸せになります!
学園に入学して、あっという間に三年が過ぎた。
小説の中で悪役令嬢として振る舞っていたアリアンヌは、今では友人たちに囲まれ、心から楽しそうな学園生活を送っている。
その光景を目にするたび、俺は泣きそうになるほど嬉しかった。
なにせ、小説の中のアリアンヌには取り巻きこそいたものの、心を許せる友人と呼べる存在はいなかったから。
楽しそうに友人たちと笑い合うアリアンヌを見かけるたび、俺の胸はこれ以上ないほど満たされていた。
そして、驚くべきことにアリアンヌが悪役令嬢にならなかったことで、別の令嬢がその役割を引き継ぐようにヒロインのエリナ嬢の前に立ちはだかっていた。
恐るべし、物語の強制力。
今日も今日とて、現実の悪役令嬢がヒロインに嫌がらせをしているところを見かけ思わず眉をひそめる。
すると、いつの間にか隣に来ていたアリアンヌが俺の制服の袖を引っ張る。
「アリアンヌ?」
「ロイ。私、あの子を救いたいの」
硬い表情でそう呟くアリアンヌの決意に、俺は思い出したように目を見開く。
そういえば、あの令嬢――ロゼッタ・アルテッツァ侯爵令嬢は、王太子ディロイス殿下の婚約者であり、アリアンヌの友人の一人だった。
それにしても、小説では自分と殿下以外は虫ケラのように振る舞っていたアリアンヌが、現実では友人のために動こうとするなんて……よし、推しの頼みだ!
破滅回避の導き手として、全力で引き受けよう!
「それなら、俺と一緒に戦ってくれるか?」
「当たり前でしょ!」
こうして俺たちは、現実の悪役令嬢――ロゼッタ・アルテッツァ侯爵令嬢の破滅を回避するために動き出した。
まずロゼッタ嬢から事情を聞くと、案の定、小説と同じ展開になっていた。
学園でエリナ嬢と出会った途端、ディロイス殿下が彼女に夢中になってしまったという。
ただし、小説と大きく異なる点が2つあった。
1つは、ロゼッタ嬢はディロイス殿下に対して全く恋愛感情を抱いていなかったこと。
それどころか、殿下との婚約を破棄し、想い人であり――そして、俺の友人でもあるリオリス・アルケード伯爵子息と結婚したいと思っているのだ。
この件については、ロゼッタ嬢の両親も同意しているらしい。
だが、この婚約は王族からの申し出であるため、言い出すことが不可能らしい。
ここも、小説と異なるな。
もう1つは、エリナ嬢は学園入学前からディロイス殿下と交流を持っていたということだった。
これには、さすがに言葉を失った。
なにせ、男爵令嬢が入学前に一国の王太子と接点があったのだから。
そこで俺はある推測をする。
『ヒロインが俺と同じく前世の記憶を持っている』という可能性を。
そう思って探ってみた結果、予想は的中した。
やはり、ヒロインは俺と同じく前世を持っていて、彼女が王太子を利用し、ロゼッタ嬢を悪役令嬢に仕立て上げ、物語を“正しい形”に戻そうと水面下で動いていた。
その事実を知り、俺は怒りを覚えた。
そこで俺は、前世の記憶については伏せたまま、アリアンヌとロゼッタ嬢に事の次第を説明する。
すると、烈火のごとく怒ったアリアンヌは、公爵家の権力を惜しみなく使い、証拠を徹底的に集める。
そして、断罪が行われる卒業パーティーの日。
全ての証拠を揃えたアリアンヌと俺は、ロゼッタ嬢が婚約破棄を王太子から告げられた直後、殿下とエリナ嬢の前に現れ、ヒロインの悪行を公にした。
パーティーに出席していた陛下は、それを聞いて即断を下し、王太子とヒロインに厳罰を言い渡す。
加えて、ロゼッタ嬢との婚約は王家の有責として正式に破棄された。
「ロイ。私、成長して頼もしくなったあなたと婚約出来て本当に良かったわ!」
嬉しそうに微笑む彼女を見て、俺は堪らずその身体を抱きしめた。
「ロ、ロイ!?」
「アリアンヌ。俺も君と婚約出来て本当に良かった」
「ロイ……」
「ずっと、君を大事にする」
前世の推しであり、未来の妻である君を、騎士として、未来の夫として、一生かけて守り、大事にすると誓う。
すると、アリアンヌがそっと俺の背中に手を回した。
「私も、あなたのことをずっと大事にする」
そう言って笑った彼女は、間違いなく世界一美しかった。
一方、王太子とヒロインが何やら盛大な修羅場を迎えているようだが……まぁ、推しが無事に断罪回避出来たのでどうでもいい。
悪役令嬢の幼馴染に転生した俺は、断罪回避の導き手になる 温故知新 @wenold-wisdomnew
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