第4章:前へ進む
第4章:前へ進む
ダリアンは本を閉じた。
体が動かなかった。
それは、ただの日記ではなかった。
遺産であり……警告であり……そして、あるいは宣告だった。
「そんなはずはない……」
彼は考えた。
「この日記は罠なのかもしれない。体制を疑う者を炙り出すための、党の仕掛けだ」
ゆっくりと立ち上がった。
空気が必要だった。
「少し、外を歩こう……」
そう呟いた。
階段を下り、通りへ出た。
夜はすでにヴェルガリスを覆い、重苦しい静寂が街に沈んでいた。
街灯は濡れた地面をかろうじて照らし、地区の拡声器からは、かすれたスローガンが繰り返し流れている。
目的もなく歩き続け、やがて党の広場に辿り着いた。
塔は、巨大で灰色の塊のように彼の前にそびえ立ち、霧雨の中で体制の旗がはためいていた。
ダリアンは長い間、それを見つめていた。
あの壁の内側で、いったいどれほどの嘘が生まれたのか――想像しながら。
その時、脇道の路地を横切った瞬間、短い口笛の音が聞こえた。
次の瞬間、何かが空から落ち、激しく頭を打った。
反応する暇もなかった。
世界は闇に沈んだ。
目を覚ますと、金属製の椅子に座らされ、闇に囲まれていた。
空気は冷たく、錆の匂いがした。
「党の情報部は、ずいぶん仕事が早いな」
ダリアンは平静を装い、言った。
「ここで尋問するつもりか?」
闇の奥から、低く落ち着いた声が答えた。
「違う。
私を送ったのは党ではない。
エリアン・マレクだ」
ダリアンは息を止めた。
声は続く。
「本に書かれていることは、すべて真実だ。
だが、その真実を受け入れるか、
それとも党の足元で空虚な人生を生き続けるか――
選べるのは、お前だけだ」
沈黙が訪れ、耐え難いほどに重くなった。
「この国の運命を選ぶ時が来た」
声はそう告げた。
鈍い衝撃が思考を断ち切った。
再び、すべてが暗転した。
次に目を開けた時、ダリアンは屋根裏の床に横たわっていた。
天窓から朝の光が差し込んでいる。
本は、彼の傍らで開かれたまま、
まさに先ほど読んでいたページで止まっていた。
一瞬、それが現実だったのか……
それとも夢だったのか、分からなかった。
だが、ページの余白に、先ほどまでは存在しなかった一文が、異なる筆跡で書かれていた。
――
「真実は、それを記憶する勇気を持つ者のものだ」
――
ダリアンは動かなかった。
もう、何もかもが元通りにはならないと分かっていた。
「……本当に、俺は準備ができているのか?」
彼は小さく呟いた。
その瞬間から、彼は悟った。
自分の人生は、もはや自分だけのものではない。
カウントダウンが始まっていた。
二十二年の人生の中で、彼は変革を夢見てきた。
体制が崩れ落ちる日を、何度も思い描いてきた。
だが、現実の機会が目の前に現れた今、
恐怖が骨の奥へと染み込んでくるのを感じていた。
「危険すぎる……」
彼は日記を見つめながら考えた。
「だが、このまま何も変わらなければ……
俺は一生、群衆の中の影のままだ。
体制の奴隷として終わる」
深く息を吸った。
「選択肢はない」
今度は、確かな声で言った。
「前へ進むしかない。
グラン・パルティを倒すか……
その途中で死ぬかだ」
日記を閉じようとした、その時、
何かが彼の目を引いた。
最後のページの下部、紙の折り目にほとんど隠れるように、
新しいインクで書かれた手書きのメモがあった。
――
「協力者を探すなら、ここに元・解放戦線の構成員たちの連絡先を残しておく。
ただし、慎重に動いてくれ。
誰もが過去を掘り起こしたいわけではない……
そして、多くは監視されている可能性がある」
――
その下には、正確に書かれた名前と所在地の一覧。
それは、彼に新たな道を示していた。
ダリアンは唾を飲み込んだ。
この戦いに、彼はもう一人ではない。
少なくとも――一人である必要はなかった。
日記を丁寧に閉じ、金属箱に戻した。
外では、雨が止み始めていた。
屋根裏を出る時が来た。
そして――
仲間を探し始める時が。
NEMESIS @Saul27027
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。NEMESISの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます