第6話 寛永寺涼泉院
案内を乞うと、玄海という初老の和尚が本堂の奥から出てきた。
お蘭が俺を「お上の御用で、ご浪人さまが殺された件を調べに来られた村越源四郎さまです」と紹介した。玄海は特に怪しみもせず、俺に「ご苦労様です」と礼をした。俺は黙って頭を下げた。
お蘭が玄海に重ねて言った。
「さっそくですが・・ご浪人さまが殺された現場を見せていただけませんか?」
玄海が今度はお蘭に頭を下げた。
「分かりました」
玄海が横の
「
庫裏から「へ~い」と返事が聞こえた。
少しすると、庫裏の戸が開いて、寺男が灯の付いた提灯を四つ持ってきた。俺たちと玄海に提灯を渡すと、自分も一つ持った。玄海が山門の方へ歩き出した。
「こちらへ」
俺とお蘭、それに久助と呼ばれた寺男が提灯を手に後に続く。辺りはすっかり暗くなっている。
山門を出て白壁に沿って少し歩くと、玄海が立ち止まった。玄海が提灯で地面を照らした。
「ここが・・柳田銀ノ進さまが殺された場所です」
さすがに、もう死体は片づけてあった。地面には何の痕跡もない。俺は玄海に聞いた。江戸で・・俺はお蘭以外の人間と初めて会話を交わした。俺の声が震えた。令和の言葉のようになった。
「壁から手が出るというのも・・この場所なんですか?」
「そうです」
そう言うと、玄海は持っている提灯を横の桜の木に引っ掛けた。そして、白壁の方を向いた。提灯の灯りが白壁をオレンジ色に染めている。
玄海が壁を見ながら言った。
「手は・・いろんなところから出るんじゃ」
白壁から・・何かが伸びてきた。
俺は眼を凝らした。
それは・・手だった!
一本の手が白壁から出てきた。大きく手のひらを広げると・・玄海の横にいた久助の首を掴んだ。そのまま、締め付ける。久助が提灯を落とした。久助の顔が苦悶にゆがんだ。
俺は・・恐怖で動けない。呪縛にあったように身体が動かないのだ。
お蘭が叫んだ。
「源四郎さん。刀です」
その声で俺の呪縛が解けた。咄嗟に提灯を投げ捨てると・・腰の大刀を抜いた。両手で
久助の口から泡が出た。お蘭が大きな声を上げた。
「斬って! 早く!」
俺はお蘭の声に導かれるように・・刀を頭上に持ち上げた。そのまま・・手に向かって、勢いよく振り下ろした。
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