満儚(まんぼう)

いちごみるく

満ちた薄い人

「昨日、久しぶりに飯食ったんだよね。」


公園にある自販機を前にして夕星(せきぼし)が言った。


「何やってんの…で、何日ぶりだったの?」


満保(みほ)が呆れた声で言う。夕星は、自販機にお金を入れて飲み物を買った。

「ピッ」

不自然で聞き慣れた音が響くと中から缶が出てきた。


「4日ぶり。」

「よく生きてたね。」


夕星が缶を取り出し横にズレると、今度は満保が自販機の前に立った。


「水は普通に飲むからな。今みたいに、おしることか飲んだりして栄養は取ってるし。4日ぐらいは大丈夫なんだよ。」

「普通はそんなことしないんだけどね…。」


満保が自販機で飲み物を買う。

「ピッ」

またその音が聞こえると、中からペットボトルが出てきた。


「そんな生活してたらさすがにヤバいよ? 毎日ご飯を食べれるように、夕星の家に行ったげようか? なんなら、夕星の家に住んでご飯作ったげるよ。学校同じだし、私も一人暮らしだしさ。」

「やだよ。部屋汚いし、ゲームもろくに出来なくなるじゃん。」

「それを防ぐためにあんたの家に行くんだよ。」


夕星と満保が公園のベンチに座る。満月の秋夜は、今年で一番明るく光を放っているようで、街灯よりも目立っていた。おかげで、手に持つジュースがはっきりと見えるので、2人は手こずらずに手に持っていたジュースを開けて飲んだ。


「それ美味しいの?」

「美味いから飲んでるんだけど。これを飲むと元気になるからね。下にビリビリくる感じが、儚く満たされるんだよね〜。夕星も飲む?」

手に持っていたジュースを夕星に向けた。


「じゃあ遠慮なく。」

夕星はレモンサイダーを飲む。

「酸っぱ!」

「あっ、そういえばおしるこを飲んでたね。甘い物飲んだばかりだから、そりゃそうなるか。」


満保は、夕星の手にあったレモンサイダーを手に持ち、背中を擦った。すると、夕星はすかさずおしるこを口に流す。


「うわ、まだ酸っぱさ残ってるから甘酸っぱいんだけど。」

「いいんじゃん、珍しい味を体験できて幸せもんだね。」


満保はレモンサイダーを飲んだ。それを夕星は眺めていた。


「…まあ、もう体験出来ないかもしれないからな。」


月光が2人を照らす。それは平等に2人を照らすが、夕星には重荷だったようだ。夕星はうつむき、満保が手に持っているレモンサイダーに焦点を当てる。


「…満たされすぎかな。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

満儚(まんぼう) いちごみるく @ichigo369

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画