第5話 怖がられる手
黒犬が保健所に収容されてから1ヶ月が経った。
彼は相変わらず触れられることを拒み、オヤツを咥えるとケージの奥へ下がっていく。
「私たちが保護できる数には限りがありますから、首輪も付けられないような犬は引き出せません」
少人数での保護活動故に、全ては救えない。
譲渡ボランティアと預かりボランティアができることは、収容頭数が限界にならないように、早く譲渡できる犬を引き出すことだけだった。
「虐めたりしないよ、怖くないよ」
話しかけても、黒犬は出来る限り距離をとろうとケージの後方にへばりつく。
黒犬を見に来たボランティア仲間が、反対側に回ってケージ越しに手を伸ばすと、器用に身をよじって避けてしまう。
「噛んだりはしないんだね」
「噛んでる暇があったら逃げたいみたいだよ」
絶対に触られるもんかという気合を感じる避けっぷり。
噛むという行為も触れることになるから嫌がっている感じがする。
ここまで気合の入ったビビリ犬を見たのは初めてだった。
お題フェス11【手】黒犬物語 BIRD @BIRD2023
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