第3話 届かなかった救いの手

 初めての預かり犬「さくら」が新たな家族に引き取られた後。

 僕は次の預かり犬を選ぶため、再び保健所の犬舎を訪れた。

 ビビリの黒犬は、相変わらず人の手を避けて後ずさる。

 その左右のケージは、どちらも空っぽだ。

 仔犬は里親希望がきていると聞いていたけど、あの大型犬も貰われたのだろうか?


「あれ? あの大きい子、貰われたんですか?」

「いえ、あの子は……譲渡見込みが無かったので……」


 大型犬について聞くと、職員さんは言葉を濁した。

 当時、里親希望やボランティアが引き出す可能性が低い犬は、譲渡見込み無しとされて殺処分されることがあった。


 大きすぎたから。

 フィラリア強陽性で長くはなさそうだったから。

 誰も引き取ってくれなさそうだから。

 20キロ超えの大きな虎毛の犬は、そうした事情から殺処分となった。

 石垣島には殺処分機は無いので、薬物注射による安楽死だと知らされた。


 初めて会ったとき、大きな虎毛の犬は穏やかで、ケージから出されたら尻尾を振ってすり寄ってきてくれた。

 こんなに優しい子なら、大きくても誰か貰ってくれるかもと期待していたのに。

 彼の命は、救いの手から零れ落ちてしまった。


 全てを、救えるわけじゃない。

 分かっていたつもりだったけど、その死は鉛のように重く、心の底へ沈んでいった。

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