第2話 救える手はひとつだけ

 20キロ超えの人懐っこい大型犬か、10キロのビビリ野犬か。

 僕が預かれる犬は、今のところそのどちらか片方だ。

 といっても、その頃の僕に保健所から犬を引き出す権限は無く、譲渡ボランティアの知人に決定権があった。


「全てを救えるわけではありません。里親に繋がりそうな子を選びましょう」


 譲渡ボランティアの知人は、僕によく考えるようにと告げる。

 大型犬は、石垣島では貰い手がつきにくい。

 人馴れしていない野犬は、譲渡しても脱走する可能性がある。

 選択に困っていたところに、新たな犬が保健所に収容された。


 柴犬に似た明るい茶色の短毛。

 栗色の瞳が美しい、立ち耳の中型犬。

 新入りは、すぐに寄ってくる人懐っこい犬だった。


「先にこの子を引き出すので、預かってもらえますか?」

「分かりました」


 保健所は、収容可能頭数の限界近くなれば、殺処分をするしかなくなる。

 犬が増えれば、殺処分に近づく。

 譲渡ボランティアはそれを防ぐため、早く譲渡できそうな犬を選ぶ必要があった。


 こうして、僕は新入り犬を預かることになった。

 預かり犬には「さくら」と名付けた。


 さくらは愛らしい見た目と性格のおかげで、すぐに貰い手が見つかった。

 里親希望の家族が見学に来て、その場でトライアル決定となり、立ち会った譲渡ボランティアが届けに行ってくれた。


 保健所の譲渡ボランティア登録者は複数いる。

 しかし、当時この島で活動していた譲渡ボランティアは1人だけで、救えるものがとても少なった。

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