お題フェス11【手】黒犬物語
BIRD
第1話 拒まれる手
僕とルークとの出会いは、保健所の犬舎の中だった。
その日、保健所には、3頭の犬が収容されていた。
生後2ヶ月くらい、人懐っこくて元気な黒白仔犬。
20キロくらいありそうな、落ち着いた大型の虎毛の犬。
10キロくらいの、ビクビク怯えている黒白の中型犬。
3頭の中で、1頭だけビクビク怯えている犬が、捕獲機で捕まった野犬ルークだった。
保健所には「譲渡ボランティア」というシステムがある。
譲渡ボランティアは、保健所から収容動物を引き出して保護した後、里親に譲り渡すことで殺処分を防ぐボランティアのことだ。
当時の僕は、譲渡ボランティアの知人が引き出した犬を代わりに飼育する「預かりボランティア」をしていた。
その日は、新たに預かる収容犬の下見で、保健所を訪れていた。
「仔犬はすぐ貰われそうですね」
「はい、既に問い合わせがきています」
元気いっぱいケージから鼻先や前足を突き出してくる仔犬は、ボランティアの手を借りなくても貰われていきそうだ。
僕が預かるとしたら、虎毛の大型犬か、黒白の中型犬になるかな。
そう思いつつオヤツを差し出すと、大型犬は迷わずパクリと食べた。
中型犬はというと、おずおずと躊躇いがちに顔を近づけて、オヤツを咥えるとケージの奥まで後ずさりしていった。
「ビビリですね」
「貰い手が見つかればいいのですが……」
ケージの奥で縮こまりながらオヤツを食べる犬を見つめて、僕と保健所職員は心配そうに呟いた。
保健所の動物たちが、殺処分から免れる方法は3つある。
①飼い主が迎えに来る
②里親希望の人に引き取られる
③譲渡ボランティアに引き出される
譲渡ボランティアが保健所から動物たちを引き出すには、預かりボランティアの存在が重要になる。
特に犬は散歩などの労力を必要とするため、1人の預かりボランティアが引き受けられるのは、基本的に1頭だけだった。
「少し考えてから決めますね」
「はい、よろしくお願いします」
僕は、どの子を預かるか保留にして、一旦保健所から出た。
仔犬はボランティアの手を借りなくても里親に引き取られるだろう。
預かるとしたら人懐っこい大型犬か、ビビリの中型犬か、どちらかになりそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます