ベタな呪いの人形編

第14話 アップダウン

 放課後、僕は通学鞄に教科書を入れて立ち上がった。部室である美術室に向かうために教室を出る。すると突然、後ろから誰かに抱き上げられた。そのまま肩に担がれる。


「菊池、一緒に帰るぞ」


 聞き慣れた声。僕を担いだのは神崎君だった。


「高い怖い高い怖い高い怖い」


 肩の上でじたばたする。高身長からの眺めは恐ろしかった。


 神崎君が物騒なことを言う。


「降ろしても逃げねえか?」


「逃げない、てか逃げたくても逃げられないでしょ」


「じゃあ降ろしてやる」


 僕は肩から降ろされた。神崎君に尋ねる。


「どうして一緒に帰るの? もう薰ちゃんは取り憑いてないんでしょ?」


「菅原が招集しょうしゅうをかけてるんだ」


「そ、そんなぁ……」


 もう怖い体験はソイノメ様の件でこりごりだ。せっかく二人と距離を置けると思ったのに、まだ何かあるのだろうか。


「でも僕、部活に行かないと」


「なんの部活だ?」


「美術部だけど」


「お前、画家になりたいのか?」


「いや、別にそういうわけじゃ……」


「じゃあ一生行かなくていいじゃねえか」


「そんな殺生な」


 神崎君と話ながら廊下を歩く。隣の教室の前を通りかかったが、神崎君は素通りした。菅原君のクラスなのだが。


「あれ、菅原君も一緒に帰るんじゃないの?」


「ああ、あいつは将棋部に顔出してから行くって」


「ええっ、じゃあ僕も美術部に顔出してからでいいでしょ!」


「そうなったらいつまで経っても来ねーだろ!」


「うん」


「堂々と肯定すんな」


 二人で学校を出る。神崎君の隣を歩くが、話すことが無くて気まずい。無言のまま歩く。


 もしかしたらこっそり逃げられるかもしれない。そう思い、徐々に歩く速度を遅くして後退をはかった。が、すぐにバレた。


「どこに行くんだ菊池?」


「え? 逃げようとなんかしてないよ?」


「そうか。ならいい」


 そう言って腕を引っ張られ、元の位置に戻される。やはり逃げるのは難しそうだ。


 僕は歩きながら、楔山での出来事を思い出した。もう六日前になるが、ずいぶん前の出来事のように思える。それくらい強烈で、現実離れした体験だった。まるで夢の記憶のようだ。あの後、菅原君の家に泊まったが、その記憶も今では懐かしい。


 僕は菅原家での思い出を回想した。

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3バカ怪奇譚 ドライフラッグ @677527

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