第13話 村井薰の後日談
《村井薰の後日談》
キクっちゃん達と別れた翌日、私はミサちゃんと一緒に夜の楔山を歩いていた。
「ねえ、ホントにやるの?」とミサちゃん。
「そうよ。ミサちゃんにしかできない仕事なんだから、頑張ってね」
私達二人は遠くに光るライトを目指して歩いていた。ライトの方からは複数人の男女の騒ぎ声が聞こえる。おそらくネットで楔山の怪談を見つけ、噂を確かめに来たのだろう。白髪ちゃんと神崎君のように。
私は彼らにミサちゃんを見せ、怖がらせようと考えていた。しかし、ミサちゃんはこのイタズラに消極的だ。
「可哀想だって。やめようよ」
「何言ってんの。あいつらは怖がりたいから来てんのよ。怖がらせるのは人助け。でも私の姿は霊感がある子にしか見えないから、この大仕事はミサちゃんにやってもらうしかないの。あいつらにしっかりトラウマを植え付けて、二度と夜中に出歩けないようにするのよ」
「うぅ、頑張ってみるけど、上手くできるかな……」
二人で話しながら暗い山の中を歩く。幽霊である私には、灯りが無くてもどこに何があるのかが見え、暗くても進むのに困らなかった。それはミサちゃんも同じらしい。
男女達が何を話しているか聞き取れる位置まで来る。その声に耳を澄ましていると、違う方向から、奇妙な声が聞こえるのに気づいた。立ち止まって(足無いけど)、ミサちゃんに尋ねる。
「ねぇ、なんか変な声が聞こえない?」
「え? あの人達の声じゃなくて?」
「ううん、方向が全然違う。ええっと」
私はもう一度耳を澄ませた。やはり
「ちょっとここで待ってて。声の正体を確かめてくるから」
私はミサちゃんをその場に残し、声がする方へと飛行した。
暗闇の奥へ奥へと進んでいく。しばらくすると、声が正面からではなく、上の方から聞こえてくることに気づいた。視線を上げ、辺りを見渡す。
そして、私は声を出している人物を見つけた。それは、木の上にくくりつけられた首だった。ソイノメ様への供物だ。
そういえば、自分以外にもソイノメ様に捧げられた人達がいるのだった。この人はそのうちの一人だろう。
首の顔がよく見えるところまで飛ぶ。その人は、私と同じくらいの年齢の女だった。ソイノメ様のように目が真っ赤に染まり、そして、苦しそうに同じ言葉を繰り返し呟いていた。
「カラダ……ヲ……カエセ……カラダヲ……カエセ」
〈ソイノメ様編・完〉
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