第2話 部下達の見送り

 有給申請を終えた俺は、会社にある移動用のポータルルームで部下達に見送られながら、元々居た世界にある家族の墓参りに行く為に元の世界行きの次元ポータルを開いた。


「俺が暫く留守の間、みんなの事頼んだぞニーナ、……おいディーノ、俺が居ないからって調子に乗ってみんなに迷惑かけるなよ?」


「はぁ!? そりゃねぇーよ隊長!! いくら俺でもそんなグヘッ!!」


「こんの馬鹿がー!! 隊長にそんな口の利き方しないでっていつも言ってるでしょ!? 隊長本当にすみません、愚弟にはちゃんと言い聞かせますから」


 そう言いながら謝る女丈夫な女性、フレイニーナ・ベケット。最近我が隊の副隊長になった女性。碧眼にハニーブロンドのロングヘアと色白な肌。更に173cm と俺とほぼ変わらない長身。おまけに胸もでかい。


「イッテー………、流石にかかと落としはねぇーよ、姉ちゃん」


「アンタが隊長に失礼な事を言うからでしょ? 隊長への失礼な態度は私が許さないわよ」


「へいへ~い、わかりましたよ~、すんませんでしたね、副隊長殿ぉ~」


 蹴られた頭を押さえて文句言ってるいる大男、アレンディーノ・ベケット。 ニーナの双子の弟である。 ニーナと同じ碧眼に金髪をスリックバックにし、213cmと俺より40cm近く高い身長と服の上でも解るほど盛り上っている筋肉。


(コイツこんなゴツイ見た目なのに、小隊内では最年少なんだよな~)

 

 そんな事を思っているとニーナの後ろから2人の男女が歩いてきた。


「まぁまぁ、落ち着いてニーナ、暴力は良くないよ。そんなに殴ってディーノがもっと馬鹿になってもしらないよ?」


 ニーナを宥めている男性。 ジョシュア・ベケット、ニーナとディーノの父親だ。少し前まで彼が副隊長をしていたが今はニーナにその役割を渡している。 翠眼で黒縁の眼鏡をかけていて金髪をツーブロックにしている。身長も195cmと息子同様高身長であるが、ディーノとは違い細身である。


「がっはっは、そうだな………いや、もしかしたらもっと強く叩いたら逆に頭が良くなるかも?…よし、アタイにも一発殴らせろ!」


 そして今、ディーノに殴り掛かろうとしてる女性、イグニラーナ・ベケット。こちらも言うまでもなく双子の母親である。ただ高身長な子供達とは違い身長が158cmしかない、そして彼女は今自分の赤毛のウェーブヘアを後ろに束ねながらディーノの元へ歩き始めた。そんな彼女の瞳の色は子供達と同じ碧色である。

 

「いやいや! 何どさくさ紛れて息子を殴ろうとしてんだよ!!父ちゃんも姉ちゃんも見てないで母ちゃんを止めてくれよ」


「そうよ! 流石にママのはディーノでも洒落にならないから! パパも一緒に止めてよ!」


 そう言いながら母親を羽交い締めにして必死に止めようとするするニーナ。


「はいはい、……母さん今日は隊長の見送り来たんでしょ? バカな事してないでちゃんとしてよ」


「え~~~ニーナだって一発蹴ったんだし、アタイだって一発ぐらい良いじゃん」


 夫に窘められても尚食い下がるラーナ。


「はぁ~、……何しとるんじゃ、あの阿呆どもは、見てるこっちが恥ずかしいわい」


「うふふ、でも賑やかで楽しいじゃないですか、貴方」


 目の前の馬鹿共の醜態嘆きながら俺の側に移動してきた老夫婦。


「すまんのう、こんな時にまで騒がしくしてしもうて」


「気にすんな、いつもの事じゃないか、いちいちそんな事で謝る必要ないぜ?」


 俺を相棒と呼ぶ老紳士、ジョセフ・ベケット。     俺が次元災害に巻き込まれて、辿り着いた世界で初めて出来た仲間の一人。 この小隊の初代副隊長であり、長い間ずっと俺と一緒に戦ってくれた相棒だ。 相も変わらず強い意思が感じられる灰色の瞳、昔は茶髪のショートヘアだったが、今は長い白髪を後ろで三つ編みにしている。 身長は俺と同じ175cmで、全盛期から幾分か衰えたがそれでも数多の修羅場を潜ってきたと解る肉体。そんな彼は昔から変わらないはにかんだ笑顔で話しを続けた。


「ふっふっ、お前さんは昔から変わらんな」


「そういうお前はめっちゃ変わったけどな」


「「……はっはっはっ」


 俺とは違いすっかり老いてしまった親友とそんな軽口を叩きながら笑っていつものグータッチする俺達。


「あら、うふっふっ、久しぶりに見ましたわ、貴方達のグータッチを」


 そして微笑ましそうに俺達の事を見ている老淑女、ソフィーヤ・ベケット。 ジョセフの妻で彼と同じ異世界で出来た仲間の内の一人である。彼女はこの隊で唯一の後方支援専門の隊員である。そんな彼女は息子と同じ翠眼でハニーブロンドから少し色褪せたグレイヘアーの髪をサイドアップ三つ編みにしている。身長も少し縮んで149cmしかなく、夫もそこまで高くないのにどうやってあんなでかい息子か産まれてくるんだと、今でも不思議に思っている。


 ニーナ、ディーノ、ジョシュ、ラーナ、ジョー、そしてソフィー、以上が我が076小隊の隊員であるベケットファミリー(俺を除く)だ。


「そうじゃな、ワシも久々にお前さん会えて懐かしい気分じゃわい」


「そうか? 俺は大してそんなに久しぶりって感じじゃ無いが、…ジョー、最後に会ったのってそんな前か?」


「なぁ~にを言っとるんじゃお前さんは、最後会ったのはもう59年前じゃぞ、59年前。寿命を捨てたお前さんにとっては一瞬かもしれないがただ長寿になったワシらにとっては結構長い時間なんじゃ。それに任務向かおうとしたらお前さんが急に『暫くは俺一人で大丈夫だからお前ら休んどけ』って言って一人でずっと仕事してたから会える訳無いじゃろ」


「い、いや、それは、お前達にしっかり休んでもらいたくて……」


「千年間も休まずに働いているヤツが何言ってんだよ」


「うっ…そ、それを言われると何も言い返せねぇ……」


 昔の口調に戻ったジョーに正論を言われ何も言い返せなかった俺にソフィーが話し掛けてきた。


「ところでツバサさん、今回の休暇は如何様にお過ごしの予定がですか?」


「いや、何も決まってないんだ、取り敢えず元の世界にある家族の墓参りをしてからゆっくり考えようと思って」


「あら、そうなのですね。 でしたらもし差し支えなければ、お墓参りが終わった後でも構いませんので、是非私達と一緒に貴方の世界で旅行に行きませんか?」


「はぁ!? 何を言っとるんじゃソフィー、そんな事ワシは聞いとらんぞ! それにいくらワシらの仲でも急に押し掛けたらツバサも迷惑じゃろう?」


「俺の世界で旅行? ……仕事は大丈夫か?別に無理して俺に付き合う必要はないぞ?」


「それでしたら心配ご無用ですわ、先日カズマ様から『他の隊の新人育成の為に076小隊には暫く休んで欲しい』と通達か届きましたわ、その為私達も急な休みで何もする予定がございませんの」


「…….話は分かったが、何で俺と一緒に旅行するって話しに?」


「そうですね、 まずは私がロウワールド(現代世界)に行ってみたいからですね、知っての通り私達はハイワールド(ファンタジー世界)の出身ですのでこれまでハイワールドにしか仕事を割り振ってもらえなくて、ロウワールドに行ったことが無いのです。 私達の知ってるロウワールドは、アナタと家族の思い出話でしか聞いたことがなく、どういった世界なのか、とても興味があります」


 俺の質問に興奮気味に答えるソフィー。 


「と、奥様が仰ってますが、お前はどうしたいんだジョー?」


 俺はどう答えたら良いか分からなかったから取り敢えずジョーに話を振った。


「ん?ワシか?…そうじゃな、…そう言われるとワシも興味が湧いてきたわい。どうだ?俺達が行っても大丈夫か?」


「俺は大丈夫だけど……向こうの状況が分からないから確約できないぞ? 取り敢えず連れて行けるかどうかはともかく、状況が分かり次第連絡するから、それまで待ってくれ」


「そ、そうですか……それなら仕方ない…ですね」


 そう言いながらシュンとするソフィー。


「予定も決まって無いのに安請け合いもできないか、…無理言ってすまなかったのう」


「いいって気にすんな、……じゃあ俺はそろそろ行くとするよ」


「ふむ、取り敢えずワシらは行けるかどうか分からないから、お土産よろしく頼んだぞ」


「そうですね、…あっ、私は甘いお菓子がいいですわ」


「おう、取って置きのを買ってやるから楽しみにしておけよ」


「ふっふっふっ、楽しみにしてますね」


 ジョーとソフィーに見送られながら俺はポータルを潜った。

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ユグドラシル 外伝 豊田翼の帰還編 異世界から戻ってきたら男女貞操逆世界になっていた 志摩津活也 @Karsuya

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